循環不全のため,組織や細胞レベルで需要に応じた酸素供給が不足した状態である。循環不全の原因によって,①低用量性ショック,②心原性ショック,③血液分布異常性ショック,④閉塞性ショック,に分類される。組織代謝の破綻によって微小循環レベルで血管内皮障害や炎症,凝固障害,血管平滑筋障害をきたすので,早期介入がなければ臓器障害が進行して致死的となる。早期に原因を明らかにして対処することが求められる。
ショックに特異的な病歴より,ショックの原因病態に対する病歴聴取を意識する。たとえば,胸痛の有無や発熱の有無などの病歴が重要となる。進行したショックでは,脳循環不全のため,意欲の低下や興奮,意識レベルの低下がみられ,患者本人からの病歴聴取が困難なことが少なくないので,付き添い者からの病歴聴取に努める。既往歴や内服中の薬剤は原因診断の重要な手がかりであると同時に,バイタルサインをはじめとした症候を修飾しうるので,確実に把握する。
血圧:収縮期血圧≦90mmHg(普段の収縮期血圧:≧150 mmHgでは低下≧60mmHg,≦110mmHgでは低下≧20 mmHg)である。脈圧はショックの原因鑑別に役立つ。
心拍数:通常≧100/分である。
呼吸数:血圧低下によって呼吸促迫が出現する。また代謝性アシドーシスに陥っている場合,頻呼吸や大呼吸がみられる。
意識レベル:血圧の低下の程度によって障害される。意識障害がみられなくても欠伸などがみられる場合がある。
体温:敗血症性ショックでは高体温が多い。発汗や末梢循環不全に伴い,体表面温度は低下していることが少なくない。
ショックの原因となった病態の症候がみられる。5Pとして,ぐったりとした状態(prostration),顔面蒼白(pallor),冷汗(perspiration),脈が弱く早い(pulselessness),呼吸促迫(pulmonary insufficiency),が挙げられる。また,爪床血流充填時間(capillary refilling time:CRT)≧2秒,乏尿≦0.5mL/kg/時がみられる。なお,たとえばアナフィラキシーショックでは必ずしも顔面蒼白とはならないように,前述の通り原因病態によって所見は異なることに留意する。
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