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老視(老眼)[私の治療]

No.5116 (2022年05月14日発行) P.48

森本 壮 (大阪大学大学院医学系研究科視覚機能形成学寄附講座准教授)

登録日: 2022-05-12

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  • 老視とは,近くの対象物に焦点を合わせる能力が徐々に低下していく状態であり,加齢に伴う正常な現象である。老視(presbyopia)という言葉は,ギリシャ語のpresbys(老人)+opia(目)に由来している。老視は40歳頃から症状が出はじめる。主な症状は,近くの物を見るとぼやける,今まで読めていた距離で小さな文字が読めない,暗い場所で本が読みにくいなど,近見作業が快適でなくなり,近業作業後に眼精疲労や頭痛が生じる。水晶体は,近見視時に膨らむことで近くの物体の像を網膜上に結ぶことができる。水晶体は生涯にわたって不溶性蛋白質などが内部に蓄積し,時間の経過とともに徐々に厚く,硬くなり,弾力性が低下し,透過率も低下する。このような水晶体の加齢性の変化によって,近見時の調節力が低下することで老視が生じる。

    ▶診断のポイント

    近見視力の低下,眼精疲労などを訴える40歳以上の患者で,遠見視力は正常で,近見視力の低下を認め,通常の眼科検査で器質的眼疾患を認めず,また,視機能検査で斜視や調節痙攣など機能的眼疾患が否定される場合,老視と診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    老視は加齢性の変化のため,直接,老視の進行を止める方法や予防法はなく,眼鏡やコンタクトレンズ(CL)によって老視を矯正する。眼精疲労や頭痛を伴う場合には,近業作業の制限や休養などを患者に指導する。また,ビタミンB12製剤で,毛様体筋に作用し微動調節を改善する効果のあるシアノコバラミン点眼液を処方する。屈折矯正については,正視,軽度~中等度の近視,強度近視,遠視によって,眼鏡,CLを使い分ける。

    【老視矯正用の眼鏡・CLについて】

    老視に対する眼鏡は,近見矯正のためにレンズ度数を調整した眼鏡である。正視の場合は,近用のみ矯正するレンズを処方し,近視や遠視がある患者では,遠見と近見を矯正するためのレンズとして,遠近両用レンズ,三焦点(遠中近)レンズ,累進屈折力レンズがある。遠近両用レンズは,2つの部分があり,それぞれの部分が異なる焦点距離に対応しており,3焦点レンズは,遠近両用レンズに中間部を加えたもので,中距離の物体を見ることができる。累進屈折力レンズは,レンズ全体で屈折力が徐々に変化していく。

    CLについては,近視または遠視のためCLを装用している患者が適応で,両眼に遠近両用コンタクトレンズを装用するか,片方の眼に遠方用CLを装用し,もう片方の眼に近方用のCLを装用し,遠方と近方で使う眼を変えるモノビジョン法がある。遠近両用CLにもソフトCL(SCL)とハードCL(HCL)がある。遠近両用SCLは,3焦点や累進屈折力レンズがあり,レンズの中心部が近用,周辺部が遠用になっており,同時視型で視線を変える必要はない。一方,HCLは,交代視型がほとんどで,中心が遠用,周辺が近用になっており,遠見では視線をまっすぐにし,近見では視線を下げることによってそれぞれ遠方と近方が矯正できるようになっている。

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