【質問者】
太田剛史 神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科部長
【慢性刺激による病態変化の把握と治療維持を見据えたデバイス選択】
DBS治療対象疾患は多岐にわたりますが,本稿ではパーキンソン病についてまとめます。パーキンソン病に対する視床下核DBSについては10年までの報告が多く,15年を超えた例についての報告も出始めています。ウェアリングオフ・ジスキネジアなどの運動合併症に対する効果,およびL-ドパ換算用量相当量で評価する薬剤必要量の減量効果は,15年を超えても維持されています。
一方,変性疾患である原疾患の進行に伴い,5年を超えるとQOLおよびADLの改善効果は減弱することも知られています。L-ドパ反応性に乏しい体軸症状(姿勢反射障害・歩行障害・構音障害など)にはDBSも効果が乏しく,副作用を念頭に刺激条件の再考も必要です。高次脳機能低下速度は,同様の背景を持つ非手術患者群と同等とされています。罹病期間をそろえて比較すれば,むしろ良好であるという報告もありますが,DBS適応基準により選択を受けているため有利であったとも考えられます。言語流暢性など低下しやすい機能もあります。
予後良好因子は,術前L-ドパ反応性・振戦優位型(無動固縮型ではない)・前頭葉機能やオフ時の運動機能の維持などが挙げられます。発症早期DBSのメリットも報告されましたが,診断の確実性などの観点からも進行期に検討します。
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