非ステロイド型の選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であるフィネレノンは、慢性腎臓病(CKD)合併2型糖尿病(DM)例に対する心腎保護作用が、大規模ランダム化試験“FIGARO-DKD”と“FIDELIO-DKD”で明らかになっている。しかしこれら2試験では、現在、米国でCKD合併2型DMに推奨されているSGLT2阻害薬とGLP-1アゴニストの併用率は1割未満だった。そのため、これら標準治療へのフィネレノン上乗せ効果は必ずしも明らかではない。
そこでPeter Rossing氏(ステノ糖尿病センター、デンマーク)は、上記2試験併合データからGLP-1アゴニスト併用例を抽出し、フィネレノン上乗せの作用を解析。6月3日から米国ニューオーリンズで開催中の米国糖尿病学会(ADA)学術集会で報告した。
今回、併合解析された“FIGARO-DKD”と“FIDELIO-DKD”の対象はいずれも、忍容最大用量のレニン・アンジオテンシン系抑制薬を服用していたCKD合併2型DMである。両試験併せて1万3171例が、フィネレノン(10~20mg/日)群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検下で3年間(中央値)観察された。1次評価項目は“FIGARO”が心血管系(CV)イベント、“FIDELIO”が腎イベントだった。
今回の解析は、上記からプロトコール違反例を除外し、試験開始時にGLP-1アゴニストを使用していた944例と残りの1万2082例に分けて行われた。
背景因子は、GLP-1アゴニストの有無でランダム化した結果ではないため、服用の有無で若干の差が認められた。特に、GLP-1アゴニスト使用群では、血糖低下薬や降圧薬、そして脂質低下薬の併用率が高かった。
まず腎転帰、フィネレノン群における尿中アルブミン/クレアチニン比は、GLP-1アゴニスト併用の有無を問わず、プラセボ群に比べ有意に低値だった。
また、フィネレノン群における「腎不全・57%以上の推算糸球体濾過率(eGFR)持続的低下・腎関連死」のハザード比は、GLP-1アゴニスト併用群で0.82(95%信頼区間[CI]:0.45-1.48)、非併用群で0.77(同:0.67-0.89)。併用の有無による有意な交互作用は認められなかった(P=0.79)。「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中・心不全入院」についても同様で、フィネレノン群における有意な抑制作用は、GLP-1アゴニスト併用の有無に影響を受けていなかった。
有害事象も同様である。服用中止を要した有害事象の発現率は、GLP-1アゴニスト併用ならフィネレノン群:7.1%、プラセボ群:5.9%、非併用でも順に6.3%と5.4%だった。高カリウム血症の頻度も、GLP-1アゴニスト併用の有無に影響を受けていなかった。
質疑応答では、GLP-1アゴニストにはフィネレノンと代謝酵素競合の可能性がある薬剤も存在するとして、GLP-1アゴニスト間で転帰に差があったかを問う声が上がった。しかし当然ながら、少数での解析であるため、そのような違いは見出されなかったとRossing氏は述べた。
本解析、ならびに“FIGARO-DKD”と“FIDELIO-DKD”の両試験は、Bayer AGからの資金提供を受けて実施された。