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麦粒腫,霰粒腫[私の治療]

No.5120 (2022年06月11日発行) P.48

白石 敦 (愛媛大学医学部眼科学講座教授)

登録日: 2022-06-09

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  • 麦粒腫は,眼瞼腺組織の細菌感染であり,睫毛に付属する皮脂腺(Zeis腺),汗腺(Moll腺)に感染が生じた外麦粒腫と,マイボーム腺に感染が生じた内麦粒腫にわけられる。起炎菌は黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌が多い。
    霰粒腫はマイボーム腺の慢性炎症であり,マイボーム腺分泌脂(meibum)がうっ滞して生じた貯留囊胞に対する慢性炎症性肉芽腫である。細菌感染が合併し,急性(感染性)霰粒腫となることもある。

    ▶診断のポイント

    【麦粒腫】
    〈症状・所見〉

    症状は,眼瞼の発赤,腫脹,疼痛,圧痛である。外麦粒腫では睫毛根部に発赤,腫脹,膿汁を認める。内麦粒腫の典型例では,瞼結膜側に膿点を認め,マイボーム腺開口部に膿汁を認めることもある。病初期,特に小児では眼瞼の腫脹のみで発赤や膿点を認めないこともあるため,触診により圧痛を確認する。

    【霰粒腫】
    〈症状・所見〉

    眼瞼に固い腫瘤が蝕知される。軽度の発赤・腫脹を認めるが,通常は痛みを伴わない。細菌感染を伴う急性霰粒腫の場合は,強い発赤・腫脹・疼痛を伴い,内麦粒腫との鑑別は容易ではない。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【麦粒腫】

    細菌感染であるため,基本的に抗菌点眼薬投与であるが,腫脹が強いときは内服薬による全身投与を追加する。膿が貯留している場合には切開排膿する。

    【霰粒腫】

    慢性炎症性肉芽腫であるため,ステロイドの局所投与が有効である。感染を合併していることも多く,抗菌薬の併用が必要となることも多い。薬物投与に反応しない例や巨大例では外科的治療が必要となる。

    【治療上の一般的注意】

    麦粒腫と霰粒腫の鑑別は難しいことがよくある。診断的治療として抗菌薬投与を行い,感染が軽快しても腫瘤を触知する場合は,霰粒腫の可能性が高い。また,霰粒腫に対するステロイド治療では,長期点眼やトリアムシノロンの局所注射などでは眼圧が上昇することがあるので,特に小児では注意が必要である。

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