【質問者】
後藤憲志 久留米大学医学部感染制御学講座講師
【尿のグラム染色が最も重要。GNRでESBL産生群なら点滴ではCMZを選択する】
上部尿路感染症の初期治療薬を決定する時は,感染症診療の原則に沿って考えるとわかりやすいでしょう。その際に最も重要になるのは,グラム染色による原因微生物の推定です。上部尿路感染症の原因微生物のほとんどがグラム陰性桿菌(GNR)のため,GNRをグラム染色の見た目から3つに分類して考えます。また,原因微生物の疫学は,市中感染症をメインに考えますので,厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業の検査部門年報2020年外来検体をもとにしています。
1つ目は,太く短めの大腸菌や肺炎桿菌などのESBLを産生しやすい菌群です。感受性が良ければセファゾリン(CEZ)でも治療は可能ですが,大腸菌で約25%,肺炎桿菌では約8%がCEZ耐性です。この耐性機構の主な原因はESBL産生であると考えられています。また,大腸菌で約30%がレボフロキサシン(LVFX)耐性です。これらから,初期治療薬は点滴ならセフメタゾール(CMZ),内服ならアモキシシリン(AMPC)/クラブラン酸カリウム(CVA)が推奨されます。また,ESBL産生菌への治療においては,初期治療薬が耐性であっても原因微生物の薬剤感受性検査結果を参考に早期に治療変更ができれば,治療予後は変わらない可能性が示されています1)。治療前に適切な培養検体を提出し,その結果の確認と適切なフォローアップを行うことが重要だと言えます。
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