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ぶどう膜炎[私の治療]

No.5121 (2022年06月18日発行) P.47

蕪城俊克 (自治医科大学附属さいたま医療センター眼科教授)

登録日: 2022-06-16

最終更新日: 2022-06-14

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  • ぶどう膜炎は,ぶどう膜(虹彩,毛様体,脈絡膜の総称)およびその周囲の組織(網膜,硝子体,前房,強膜,視神経など)に炎症を起こす病態を指す。ぶどう膜炎を起こす原因疾患は約50種類あるとされ,感染性,非感染性,腫瘍性,特発性に大別される。わが国では,非感染性ぶどう膜炎ではサルコイドーシス(10.6%),Vogt-小柳-原田病(8.1%)が多く,感染性ぶどう膜炎ではヘルペス性虹彩炎(6.5%),急性網膜壊死(1.7%)が多い1)

    ▶診断のポイント

    細隙灯顕微鏡で前房内や硝子体中に炎症細胞がみられることで眼内炎症が確認できる。ぶどう膜炎はその原因疾患によって臨床像(急性・慢性,両眼性・片眼性,前部ぶどう膜炎・後部ぶどう膜炎・汎ぶどう膜炎など)や再燃のしやすさ,起こりうる合併症や視力予後,推奨される治療法はかなり異なる。可能な限りぶどう膜炎の原因疾患を特定することが望ましい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    ぶどう膜炎の治療は,局所治療(ステロイド点眼,散瞳薬点眼,ステロイド局所注射)を基本とするが,炎症(特に眼底の炎症)が強い場合にはステロイドなどの内服治療を行う。

    ステロイド内服は通常0.5mg/kg/日以上で開始し,反応をみながら漸減する。十分な内服治療により,ほとんどの症例で眼内炎症の鎮静化が可能であるが,ステロイドを減量すると再燃を繰り返す症例が存在する。そのような症例に対しては,ネオーラル(シクロスポリン)やTNF阻害薬を併用してステロイドを減量する(steroid sparing)治療が推奨される2)。ぶどう膜炎に対して保険適用があるものは,シクロスポリン(ベーチェット病,難治性非感染性ぶどう膜炎),インフリキシマブ(既存治療で効果不十分なベーチェット病網膜ぶどう膜炎),アダリムマブ(既存治療で効果不十分な非感染性の中間部,後部,または汎ぶどう膜炎)のみである。

    ケナコルト-A(トリアムシノロンアセトニド)のテノン囊下注射は,眼底に十分な濃度を到達させることができ,ステロイド内服に匹敵する消炎効果が期待できるので,近年ぶどう膜炎の治療によく用いられる。しかし,感染性ぶどう膜炎に注射すると感染を悪化させて危険なため,感染性ぶどう膜炎を十分に除外診断した上で投与する。感染性ぶどう膜炎では,消炎治療に加え,病原体に有効な薬剤を投与する必要がある。

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