【質問者】
林 靖之 大阪府済生会千里病院千里救命救急センター センター長
わが国では,病院前の選別で3次と判断された傷病者のみに対応する救命救急センターが外傷診療の主たる担い手となっており,重症外傷が減少しつつある社会状況においては十分な患者数が確保できなくなっています。一方,諸外国の外傷センターでは,重症患者のみならず様々な重症度の外傷患者を診療している場合が多く,過多なほどpatient volumeは維持されている施設が多くみられます。また,穿通性外傷が多く一般外科医を中心に外傷診療が進められている北米・南米大陸とは異なり,非穿通性外傷が圧倒的多数を占める欧州やアジア諸国においては,外傷センターの中心的役割は,最も頻度が高い整形外科的外傷に対応できる外傷外科医が担っています。
日本では,その歴史的経緯から救急医と外科医との両方の資格を備えている医師が中心的な役割を担っていることが多いものの,手術などで彼らが活躍する場面は年々減少傾向にあります。
以上から,こうした変化への対応を独善的に考察すると,今後,わが国における外傷診療の場は,救命救急センターが取り扱う3次救急患者のみならず,幅広い外傷患者の受け入れが可能なシステムを病院として整備していくべきという考えに到達します。
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