閉経直後には,骨粗鬆症の診断基準や薬物療法開始基準に該当する割合が低くても,80歳の時点では全女性の約半数がこれらの基準に該当する。しかし,この時点になると既に骨折発生例も増加し,他疾患の治療が優先されて骨粗鬆症患者の大半が無治療で放置されている現状がある。閉経直後から70歳未満の年齢層において骨粗鬆症予防を重点に診療することが,婦人科・内科医の役目である。
閉経後女性には,DXA法(腰椎・大腿骨)による骨密度スクリーニングを勧める。骨密度測定装置がなくてもリスク因子(低BMI,骨折既往,喫煙等)の問診が有用である。
自覚症状のまったくないうちから骨粗鬆症予防に対する啓発を行い,希望があれば薬物療法を行う。明らかな身長低下,亀背,骨折,疼痛等の症状が出現すれば,整形外科的治療を勧める。
この領域のエビデンスやガイドライン,治療薬は豊富である一方で,薬物療法において具体的に何をどの順で使い分けて処方すればよいか明確な指針は存在しない。加えて,閉経後骨粗鬆症のハイリスク病態に対して,疾病予防の観点から保険診療による薬物療法を推奨する情報発信は困難である。
女性ホルモン補充療法(HRT)は,健常女性における骨折リスクを減少させる数少ない骨粗鬆症予防効果のエビデンスを持つ薬物治療であるが,副作用リスクとのバランスからはホットフラッシュや発汗等の更年期障害を有する患者に限られる。
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