にきび(尋常性痤瘡)は毛包脂腺系を反応の場,面皰(コメド)を初発疹とし,紅色丘疹,膿疱,さらには囊腫,硬結の形成も見られる慢性炎症性疾患で,炎症軽快後に瘢痕を生じることがある。思春期の男女,顔面,前胸部,上背部に好発するが,成人まで持ち越すケース,あるいは成人発症もある。
にきびの病態には,毛包脂腺,ホルモン,過角化,アクネ菌,栄養,皮脂,サイトカインが複雑に関わるが,「毛包の閉塞」「皮脂分泌促進」「アクネ菌の異常繁殖」の三位一体が重要である。
治療では,アクネ菌の異常増殖に対して抗生剤の内服,外用が必要になることがあるが,近年耐性菌の問題があり,ガイドライン上推奨度の高いものを適正に使用し,中途半端なところで治療を中断しないことが肝要である。毛包の閉塞に対して作用機序を持つ外用レチノイドや過酸化ベンゾイルの外用は,コメド(面皰)から重症のにきびまで広い有効性を持つ。
日本皮膚科学会のガイドライン1)を基に痤瘡治療における漢方薬の位置づけを簡単にまとめた(図)。漢方薬はエビデンスレベルが低く,ガイドライン上推奨度はC1(選択肢の1つとして推奨)あるいはC2(十分な根拠がないので推奨しない)となっているが,日常診療において補助的に使用すると非常に有用である。
にきびに使われる漢方は多彩である。直接にきびの病態に効かせるもの(十味敗毒湯,荊芥連翹湯,清上防風湯など)から,月経で悪化する場合(加味逍遙散や桂枝茯苓丸,温経湯など)や睡眠障害やストレス,暴飲暴食などの悪化因子に対して処方するもの,冷え性や便秘などの体質改善を目的としたものなど,多数の選択肢がある。
十味敗毒湯はアトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などの湿疹皮膚炎群に頻用され,花粉皮膚炎やマスク皮膚炎で増悪する例,あるいはアトピー素因を持ったにきび患者,外用レチノイドや過酸化ベンゾイルによる刺激症状や皮膚炎に対して有効であるばかりでなく,にきびの病態に多標的に有効な実験的エビデンスを多く持っている2)。