アナフィラキシーは急性,全身性のアレルギー反応である。中でも,死亡例では治療の遅延が指摘されており,早期治療が重要である。
主に原因物質への曝露とその後の症状の経過を確認する。そのほかにβ遮断薬の内服,その可能性を示唆する心疾患,高血圧の既往は治療に影響しうるため,確認する。症状は,瘙痒感,呼吸困難感,腹痛,嘔吐の有無などである。また,運動との関連も聴取する。
原因が同定できなくとも,後述する症状があれば,本疾患を鑑別に挙げ,治療を考慮する必要がある。
血圧や酸素飽和度の低下は重症と判断するのに重要な値であるが,血圧低値の場合には測定しにくいことがある。しかし,正確な数値を測定するために時間を費やして治療開始が遅延してはならず,症状・身体所見から迅速にアナフィラキシーを診断し,治療を行う。
短時間の診察で,皮膚症状,明らかな呼吸・循環不全による切迫した状態の有無を判断する。これらの症状があれば,アナフィラキシーとして即座にアドレナリンを筋注する必要がある。例として,以下に主な身体所見を記載する。
呼吸:嗄声,stridor,wheeze,呼吸補助筋使用
循環:橈骨動脈などの実際の動脈の拍動や随伴する症状
神経:意識レベルの低下
皮膚・粘膜:膨疹,発赤,チアノーゼ
具体的には,名前等を発声させることで嗄声の有無を,聴診で気道狭窄音の有無を,その際には橈骨動脈を触知する。また,併行して脱衣し,皮膚の所見を確認する。
バイタルサインや身体所見,病歴聴取からの診断と併行して,心電図モニター,SpO2モニター装着,静脈路確保,酸素投与を行い,静脈路からは細胞外液の投与を行う。喉頭浮腫による気道閉塞には気管挿管が必要である。しかしながら,舌や声門・喉頭蓋の浮腫で気管挿管が困難な場合もあり,そのような場合には輪状甲状間膜切開を行う。
一手目 :アドレナリン「テルモ」注(アドレナリン)1回0.01 mg/kg(最大量:成人0.5mg,小児0.3mg)(大腿部中央前外側に筋注)
アナフィラキシーでは,重症化の予測やタイミングの予測は困難とされている一方で,死亡例では治療の遅延が指摘されており,アドレナリンによる早期治療が望まれる。治療反応性に乏しい場合には,5~15分間隔で繰り返し投与が可能である。繰り返し投与しても改善が乏しい場合には,低濃度のアドレナリンの持続静注を要する場合もある。
また,循環血漿量低下がある場合には,細胞外液輸液投与,β遮断薬使用中の場合には,グルカゴンの使用を考慮する。
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