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飛蚊症[私の治療]

No.5130 (2022年08月20日発行) P.48

高木 均 (川崎・多摩アイクリニック 院長)

重城達哉 (聖マリアンナ医科大学眼科学講座)

登録日: 2022-08-19

最終更新日: 2022-08-16

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  • 飛蚊症とは,硝子体混濁が網膜に投影されることにより生じる症状であり,その混濁には生理的混濁と病的混濁がある。症状としては,明るい日に白い壁などを見た際に蚊のようなものが眼球運動とともに動いて見えると訴えることが多い。その訴えの多くは生理的なものであるが,中には網膜裂孔,網膜剝離が原因のものもあるため,詳細な診察が大切である。

    ▶診断のポイント

    飛蚊症の多くは後部硝子体剝離(posterior vitreous detachment:PVD)に伴うもので,まず細隙灯顕微鏡と非接触型両凸レンズにてPVDの有無を確認する。そのほかタバコダストサインや出血がある場合には,倒像鏡を用いて眼底周辺部まで注意深く診察を行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まず診察にて生理的混濁と病的混濁の鑑別を行う。

    病的混濁の原疾患としては様々なものがある。網膜裂孔より色素が散布され自覚する飛蚊症において,緊急性が高いものとして網膜剝離がある。黄斑部に剝離が到達していないものに対しては,強膜内陥術または硝子体手術を行うなど速やかな加療が必要になる。

    また,網膜裂孔により硝子体出血が生じ,眼底診察が困難なものがある。硝子体出血の原因はほかにPVD,毛細血管瘤破裂,糖尿病網膜症など多岐にわたり,緊急性の低いものから高いものまで様々である。そのため,超音波Bモード法にて網膜剝離の有無を評価する必要があり,ない場合においても頻回な外来診察を行い,治療介入の時期を逃さないようにする必要がある。

    そのほか,ぶどう膜炎などの眼内炎症性疾患の場合は,蛍光眼底造影や採血などの検査を行い,診断・加療を行う。点眼,内服加療にて混濁が軽快しない場合には眼内リンパ腫などを考慮し,生検目的に硝子体手術を行うこともある。

    生理的混濁の場合は,患者への説明と理解が大切となる。図形や絵などを用いて,硝子体の混濁が網膜に投影されることにより,症状を自覚するしくみをわかりやすく説明する。そしてその混濁が生理的なものであり,現在治療が必要でないことをしっかりと理解してもらう。

    強い治療希望がある患者に対しても,まず容易に手術を行うのではなく,少なくとも6カ月の経過観察を行った後に自覚症状を確認する。多くの場合,自覚症状の改善を訴えることが多い。しかし症状が残存する場合においては,明るすぎる照明を避けるように指導し,コントラストを抑えることで自覚症状を軽減させる。

    それでも症状が強く,生活や職業に支障をきたす場合には,手術加療を検討する必要がある。手術を行う場合には網膜剝離,感染症,駆逐性出血といった重篤な合併症のリスクが伴うことを忘れてはならない。しかし,一番確実な方法は硝子体手術を行うことである。近年27G硝子体システムが導入され,創口が小さいことから術後低眼圧や感染症のリスクも最小限に行えるため,これまでと比べ手術の閾値は下がったと言えるが,適応には慎重な判断が求められる。

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