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【文献 pick up】認知症予防の観点からも非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は重要?:過去起点コホート研究

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2022-08-17

最終更新日: 2022-08-17

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過日、NAFLD例では心不全リスクが上昇するとの研究が報告されたが[8月3日掲載Web医事新報]、加えてNAFLD例では、「認知症」のリスクも高くなっている可能性が示された。Neurology誌ウェブサイトで89日に公開されたレジストリ研究である[Shang Y, et al. 2022.]。

解析対象となったのは、スウェーデンの全国入院/専門外来レジストリに登録された、65歳以上でNAFLDの診断がある全症例(2898名)、並びに、年齢・性別・居住地域をマッチさせた、NAFLD診断歴のない28357名である。年齢中央値は70歳、女性が55.1%を占めた。

認知症発症(診断)率は、「NAFLD診断」群(観察期間中央値5.5年)で11.51000例・年(5年発症率3.6%)、「非診断」群(同5.6年)は7.91000例・年(同2.0%)となり、「NAFLD診断」群における認知症発症のハザード比(HR)は1.8695%信頼区間[CI]:1.552.25)の有意高値だった。

なお「NAFLD診断」群におけるHR高値は、「代謝異常」補正後、さらに加えて「抑うつ」と「脳卒中」、「心疾患」で補正後も有意だった(HR1.3895%CI1.101.72)。

また「NAFLD診断」群で発症リスク上昇が著明だった認知症は、「アルツハイマー型」(HR1.1595%CI0.781.70)よりも、「血管性」認知症だった(同:1.440.962.23)。

NAFLD例で認知症リスクが上昇する機序として原著者らは、「無症候性の(脳)血管傷害」[Oni ET, et al. 2013.]に加え、「肝機能不全」と「インスリン抵抗性」を挙げている。前者はアミロイド・クリアランス低下との相関が報告されており[Wang YR, et al. 2017.]、脳へのアミロイド沈着を促進する可能性があると言う。またインスリン抵抗性は脳のインスリンシグナルを障害し、かつ高血糖惹起を介した神経に対する糖毒性をきたすとされる[Hamed SA. 2017.]。

なお本研究とは逆に、NAFLDに伴う認知症発症リスク増加を認めないと結論する、ドイツからの報告も存在する[Labenz C, et al. 2020.]。45000名近くの10年間データを解析した結果だが、今回紹介した研究とは異なり、NAFLDの診断は一般診療医が担当している。

本研究には、報告すべき資金提供はないとのことだ。

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