【自己申告の病歴に基づいている】
FRAX®は,広島コホートを含む世界の11の疫学コホート研究のデータから作成されました。危険因子の中で,骨折リスクに大きく寄与する“性”,“年齢”,“骨密度”などは具体的な数値を入力することで,相互間の関係などを解析後,計算式に入れられています。しかし,“続発性骨粗鬆症”の中の「慢性的な栄養失調あるいは吸収不良」については,現病歴つまり自己申告の情報が使われています。「どの程度の内容を示すのか」というご質問に対しては,「定義はされていない,自己申告の病歴による」という回答になります。
2008年のFRAX®発表後,いくつかの危険因子は見直されています。たとえば,“糖質コルチコイド(ステロイド)使用”に関しては,「あり」「なし」の回答とされていますが,量的に調整する方法が発表されています。2型糖尿病は危険因子には加えられていませんが,FRAX®発表後に検討された多くの論文から,調整する必要があることが明らかになっています。また,“既存骨折”は,骨折数,部位,骨折してからの期間なども再検討されています。しかし,“続発性骨粗鬆症”の「慢性的な栄養失調あるいは吸収不良」については,詳細に検討された論文はなく,「どの程度の内容か」についても検討されていません。
現在,FRAX®は,さらに多くの世界のコホート研究のデータを統合して,再検討が進んでいます。ただし,FRAX®は簡便に使えるツールをめざしていますので,各危険因子の量的な考慮や定義をどこまで反映させるかについては,簡便性と予測力のバランスを考慮に入れた上で,決まると思います。
【参考】
▶ EI Miedany Y:Arch Osteoporos. 2020;15(1): 150.
【回答者】
藤原佐枝子 安田女子大学薬学部薬学科教授