成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL)は,ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型(human T-cell leukemia virus type-Ⅰ:HTLV-1)の慢性持続感染後に発症する予後不良な造血器腫瘍である。急性型,リンパ腫型,慢性型,くすぶり型,の4臨床病型に分類される。急性型,リンパ腫型と予後不良因子(LDH,BUNが正常上限を超える,アルブミンが正常下限を下回る)を1つでも有する慢性型ATLは急速な経過をたどり,aggressive ATLと呼ばれる。くすぶり型および予後不良因子を持たない慢性型ATLは緩徐な経過をたどり,indolent ATLと呼ばれる。
HTLV-1は,主に授乳と性交を介して感染し,日本には現在80万人程度のHTLV-1キャリアが存在する。HTLV-1キャリアが生涯でATLを発症する確率は約5%であり,発症のピークは70歳前後である。
抗HTLV-1抗体が陽性であることを確認する。白血病タイプの場合は末梢血に異常リンパ球(花弁状核が特徴的)が出現する。皮膚を含め白血病タイプ以外の場合は病変部位の生検を行う。腫瘍細胞の典型的な表面形質はCD4,CD25,CCR4陽性である。厳密には,腫瘍細胞にHTLV-1がモノクローナルに取り込まれていることをウエスタンブロット法で確認する(保険適用外)。
aggressive ATLは発熱,皮疹,リンパ節腫大,肝脾腫などの症状が高率にみられ,消化管浸潤による下痢・腹痛や,中枢神経浸潤による頭痛や意識障害が出現することもある。高カルシウム血症やそれに伴う便秘,腎不全や意識障害,細胞性免疫低下に伴うサイトメガロウイルス感染症(肺炎,腸炎,網膜炎など),ニューモシスチス肺炎を伴うこともある。
indolent ATLは無症状のことが多く,健診等の血液検査を契機に診断されることが多い。皮膚症状が主体である場合は皮膚科で診断されることもある。
aggressive ATLに対しては,多剤併用化学療法を行う。年齢,全身状態,臓器障害の程度を考慮し,実施可能な症例では同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)を実施する。allo-HSCTにより,約40%の患者で長期生存が期待できる1)。allo-HSCTが計画されていない症例では,腫瘍細胞がCCR4陽性であれば抗CCR4抗体であるモガムリズマブを併用する。
indolent ATLは,aggressive ATLに移行するまで無治療経過観察を行う。皮膚病変が存在する場合,副腎皮質ステロイド外用や局所放射線療法などの皮膚指向性治療を行う。
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