AFアブレーション奏効により洞調律に戻った場合、経口抗凝固薬はやめられるのだろうか。欧州ガイドラインは原則として、脳梗塞リスクが高ければ洞調律回復の有無を問わず「継続」を推奨している[Hindricks G, et al. 2020.]。一方、米国ガイドラインの推奨は、患者ごとに血栓塞栓症リスクと出血リスクを比較衡量して決めるというスタンスだ[January CT, et al. 2019.]。わが国のガイドラインも、患者ごとに諸条件を考慮して決めるよう推奨しているようである[Nogami A, et al. 2022.]。
では実際、日本におけるAFアブレーション後の抗凝固療法は、どうなっているのだろう。Circ J誌ウェブサイトで8月20日に先行公開された、レジストリ研究"RYOUMA"が明らかにした[Nogami A, et al. 2022.]。長期抗凝固薬継続に絞って紹介したい。
RYOUMAレジストリに登録されたのは、日本62施設においてアブレーション施行が予定されたすべてのAF患者である。
今回の解析対象は、実際にアブレーションが施行され、1年間の観察が可能だった3072例とされた。
これら3072例の年齢中央値は68.0歳、男性が71.1%を占めた。CHADS2スコア中央値は「1」。「1以上」は73.1%で、そのおよそ半数が「≧2」だった。またHAS-BLED中央値は2.0。「3以上」が33.2%を占めた。そして97.7%が抗凝固薬を服用していた(うち94.8%はDOAC)。
アブレーション施行1年後の抗凝固薬中止率は、DOAC:55.9%、ワルファリン:56.4%で差はなかった。ただし、ワルファリンではCHADS2スコアの高低を問わず同様の中止率だったのに対し、DOACではCHADS2スコアが低いほど、中止率が高かった。
ではこのように抗凝固薬を中止した結果、虚血性イベントはどうだったか。アブレーション後1年間の全体での「脳梗塞・全身性塞栓症」発生率は、上述の割合で抗凝固薬が中止されたにもかかわらず、ワルファリン群:0.00%、DOAC群:0.26%と、ともにきわめて低かった。
一方、一部抗凝固薬中止を含む全体で「大出血」発現頻度を単純比較すると、ワルファリン群で3.99%と、DOAC群(1.14%)よりも有意に高値となっていた。
次にこれら「大出血」のリスクを探ると、「認知症」(8.08、1.97-34.89)、「73歳以上」(3.72、1.78-7.77)と、「アブレーション後31日以降のAF再発」(3.10、1.33-7.22)が、多変量解析後も独立した因子として残った(カッコ内はハザード比と95%信頼区間)。なお、HAS-BLEDスコアは、単変量解析では有意な因子となったものの、多変量解析では残らなかった。またワルファリンは単変量解析でも、有意な因子とならなかった。
これらより原著者らは、(アブレーションに成功した)「脳卒中低リスク例における抗凝固療法中止」は「推奨される」と結論している。
確かに、考察で指摘されている通り、欧州ガイドラインが推奨する「アブレーション成功の有無にかかわらず抗凝固療法継続」は、必ずしもエビデンスに支持されていない[Atti V, et al. 2018.]。
今後のガイドライン改訂に注目したい。
本研究は第一三共からの資金提供を受けて実施された。
※一部分かりづらい表現がありましたので、修正しました。