急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)などの造血器腫瘍では,次世代シークエンサーを用いた全エクソン解析が広く行われるようになり,これまでに様々な体細胞変異が明らかにされ,発症に重要な役割を果たす「ドライバー変異」が特定されている。これらのゲノム・エピゲノム解析研究の進歩は,AMLやMDSの発症や進展機序の解明に重要な知見をもたらしたが,正常由来の造血幹細胞においても,全エクソン解析の結果,AMLやMDSにみられる多くの体細胞変異が見出されるようになった。
興味深いことに,65歳以上の高齢者では,クローン性造血を伴う体細胞変異は10%以上に認められたのに対し,50歳未満ではその割合は1%にすぎず,加齢とともにクローン性造血を示す割合が増加することが明らかになった1)2)。このようなクローン性造血が認められる場合は,AMLやMDSなどの造血器腫瘍の発症リスクが10倍以上に増加する。このようなクローン性造血が認められる「正常人」では,将来AMLやMDSの発症リスクが高まるため,これらの集団をどのように扱っていくかは重要な課題である。正常人から造血器腫瘍発症までのより詳細なゲノム解析データが蓄積することで,造血器腫瘍発症のメカニズムがさらに明らかにされ,治療戦略を変えていく可能性がある。
【文献】
1) Genovese G, et al:N Engl J Med. 2014;371(26): 2477-87.
2) Jaiswal S, et al:N Engl J Med. 2014;371(26): 2488-98.
【解説】
木崎昌弘 埼玉医科大学副学長/埼玉医科大学総合医療センター血液内科教授