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アナフィラキシー[私の治療]

No.5133 (2022年09月10日発行) P.43

佐藤さくら (国立病院機構相模原病院臨床研究センター アレルギー性疾患研究部部長)

登録日: 2022-09-10

最終更新日: 2022-09-06

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  • アナフィラキシーは重篤な全身性の過敏反応であり,通常は急速に発現し,死に至ることもある。重症のアナフィラキシーの特徴は,致死的になりうる気道・呼吸・循環器症状により特徴づけられるが,典型的な皮膚症状や循環性ショックを伴わない場合もある。食物,医薬品,昆虫刺傷が主な誘因であり,小児では食物,成人では医薬品の頻度が高い。

    ▶診断のポイント

    以下の2つの項目のうち,いずれかに該当すればアナフィラキシーと診断する。

    ①皮膚,粘膜組織,またはその両方の症状(全身性の蕁麻疹,瘙痒または紅潮,口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)が急速に(数分~数時間で)発症した場合に加え,少なくとも次の1つを伴う。
    a.呼吸不全(呼吸困難,呼気性喘鳴・気管支攣縮,吸気性喘鳴,ピークフロー低下,低酸素血症など)
    b.血圧低下または臓器不全に伴う症状〔筋緊張低下(虚脱),失神,失禁など〕
    c.重度の消化器症状(重度の痙攣性腹痛,反復性嘔吐など)。特に食物以外のアレルゲンへの曝露後

    ②典型的な皮膚症状を伴わなくても,当該患者にとって既知のアレルゲンまたはアレルゲンの可能性がきわめて高いものに曝露した後,血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状が急速に(数分~数時間で)発症した場合。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    アナフィラキシー治療の第一選択薬はアドレナリン(筋注)である。症状が治療抵抗性を示す場合は,5~15分ごとに繰り返し投与するが,それでも症状が持続する場合には,低用量アドレナリンの持続投与を行う。また,必要に応じて酸素投与,急速輸液を行う。

    β2アドレナリン受容体刺激薬は喘鳴などの下気道症状に有効であるが,症状が持続している場合,アドレナリン筋注の代替にはならないため注意する。

    抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬)は蕁麻疹などの皮膚症状,鼻汁などの鼻症状を緩和する。鎮静作用を回避できる第二世代抗ヒスタミン薬が望ましいが,注射用製剤は第一世代抗ヒスタミン薬しかない。

    グルココルチコイドは,遷延する症状や二相性反応の予防に用いられているが,最近では急性期治療への有効性はなく,有害な場合も指摘されている。

    二相性反応(最初の反応から6~12時間後に出現することが多い)を認める場合があるので,発症後24時間は経過観察する。

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