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【文献 pick up】心不全患者におけるミネラルコルチコイド受容体拮抗薬中止は適切に実施されているか?:単施設データ解析

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2022-09-07

最終更新日: 2022-09-07

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ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA、アルドステロン阻害薬)は、左室収縮力低下心不全(HFrEF)に対する基本的治療薬である。わが国の心不全ガイドラインでも、HFrEFにクラス「Ⅰ」で推奨されている[急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)]。その一方スウェーデンの研究だが、HFrEF例における使用率は約5割で、さらにMRA開始例の約3割が、その後服用を中止していたと報告されている[Thorvaldsen T, et al. 2016.]。この3割に上るMRA中止は、適切に実施されているのだろうか。そのような問いに応えるべく、同じくスウェーデンのAnna Jonsson Holmdahl氏らがOpenHeart誌に報告した研究が、話題を呼んでいる[Holmdahl AJ, et al. 2022.]。9月1日にウェブサイト上で先行公開された。

Holmdahl氏らが解析対象としたのは、自施設でMRA開始が確認できた572例のHFrEF患者である。今回調査では、51.9%がMRAを中止していた。

そこでMRA中止理由を調べると、最多は「腎機能低下」だった(33%)。 しかし中止例の中には、ESC心不全ガイドライン[McDonagh TA, et al. 2021.]が「MRA減量基準」としている「eGFR<30mL/分/1.73m2」にすら該当してない例が44%もいた。

同様に、「血清カリウム(K)値上昇」でMRAを中止した24%のうち68%は、ガイドラインが減量考慮を推奨する「>5.5mmol/L」にも達していなかった。

またMRA中止の有無との因果関係は明らかでないが、MRA継続群では、中止群に比べ、死亡リスクは有意に低くなっていた(22 vs. 41%、P<0.001。平均追跡期間:837日)。

ガイドラインが減量・中止を推奨する検査値への増悪を待たずに、MRAが中止される理由として、Holmdahl氏らは、服用開始後のフォローアップ機会が不十分だった可能性を挙げている。ちなみに前出のESCガイドラインではMRAのモニタリング機会として、「開始・増量の1、4、8、12週間後、6、9、12カ月後、それ以降は4カ月に一度」を推奨している。

なお、血清K値がMRA中止を考慮すべきほど上昇していないのに中止された例では、約半数で腎機能低下も認められた。腎機能低下例では重篤な高K血症のリスクが上がるため、大事をとった可能性も考えられるという。ただし今回の観察では、MRA中止時に重篤な高K血症を認めたのは、3%のみだったという。

加えてHolmdahl氏らは、「心機能回復」をMRA中止の目安にしないよう警告している。拡張型心筋症対象のランダム化比較試験(TRED-HR)だが、MRAなどの心保護薬服用下で心機能改善後、それらの薬剤を中止すると心機能は再び低下した[Halliday BP, et al. 2018.]。

本研究に関し、申告すべき資金提供元はないとされる。

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