1 上半身の痛み
(1)頸椎症や寝違えによる頸部~肩の筋性疼痛
・高齢者では麻黄を含まない桂枝加葛根湯,青壮年層では麻黄附子細辛湯や葛根湯を主体に用いる。
(2)手首の腱鞘炎
・薏苡仁湯と疎経活血湯を併用する。
2 下半身の痛み
(1)腰部脊柱管狭窄症
・大防風湯を基本方剤とし,桂枝茯苓丸や八味地黄丸を併用する。
(2)高齢者の他覚的冷感を認めない足の冷え
・虚熱(腎虚の一種)ととらえて,六味丸を使用する。
(3)熱感・発赤を伴う軟部組織腫脹
・痛風や偽痛風,蜂窩織炎,打撲後の軟部組織の熱感や発赤を伴う腫脹には越婢加朮湯を基本方剤とする。
・抗腫脹効果を有する治打撲一方や,局所の赤みが強い場合は黄連解毒湯を併用する。
(4)下肢の筋肉損傷(肉離れ)
・筋緊張緩和と血行改善を目的として,疎経活血湯もしくは治打撲一方を選択する。
3 体幹の痛み(高齢者)
(1)元気な高齢者の下肢症状を伴わない腰痛
・中肉中背以上の体格で比較的元気な高齢者の腰痛に,疎経活血湯を基本とし治打撲一方を併用する。
(2)冷え性で円背を伴う高齢者の腰痛
・冷え性で円背や歩行障害がある女性の腰痛には,桂枝加朮附湯を用いる。
・認知機能障害や筋力低下が進行すれば人参養栄湯を考慮する。
(3)脊椎圧迫骨折
・「外傷がらみの腰痛」と考えて,治打撲一方を第一選択薬として考慮する。
4 体幹の痛み(青壮年)
(1)冷え性の青壮年女性の慢性腰背部,肩痛
・周囲に献身的に尽くしている女性には,柴胡桂枝乾姜湯を用いる。
(2)真面目そうな青壮年男性の慢性腰背部,肩痛
・真面目な話しぶりや姿勢,軟便傾向などに着目して,四逆散を使用する。
5 体幹の痛み(小児)─小児の腰痛
・筋筋膜などの軟部組織由来の痛みであれば,治打撲一方を考慮する。
6 痛みに影響するストレス背景がある場合の漢方薬
(1)更年期女性
・イライラしやすい,攻撃的な話し方,派手な着衣・化粧などを参考に,加味逍遙散を選択する。
(2)ストレスを周りに発散できずため込んでしまうタイプ
・ストレスが発散できず鬱々とした怒りが内にこもった状態で痛みが遷延していれば,抑肝散を候補に考える。