尿酸降下薬は尿酸に対する作用だけでなく、高尿酸血症を呈さない例における心血管系イベント抑制作用も示唆されている。機序として提唱されているのは、抗酸化ストレス作用や後負荷軽減、ATPレベル上昇などである。
ただ、有用性を示唆しているのは観察研究[MacIsaac R, et al. 2016.]や小規模ランダム化比較試験(RCT)[Huang Y, et al. 2017.]だったため、大規模RCTによる確認が待たれていた。
しかし10月8日、Lancet誌に掲載されたRCT“ALL-HEART”の結果は、痛風既往がなく、必ずしも高尿酸血症を呈していない虚血性心疾患例に対する尿酸降下薬の有用性を否定するものだった[Mackenzie IS, et al. 2022.]。
ALL-HEART試験の対象は、痛風診断歴のない60歳以上の虚血性心疾患5721例である(尿酸値の高低は問わず)。平均年齢は72歳、男性が75.5%を占めた。尿酸値(平均)は6.0mg/dL弱だった。
これら5721例は「尿酸降下薬追加」群(アロプリノール最終目標用量600mg/日[推算糸球体濾過率(eGFR):30-59mL/分/1.73m2では300mg])と「通常治療」群にランダム化され、非盲検下で平均4.8年間観察された。
その結果、1次評価項目である「心血管系死亡・心筋梗塞・脳卒中」発生率は「尿酸降下薬追加」群:2.47%/年、「通常治療」群:2.37%/年、「尿酸降下薬追加」群におけるハザード比は1.04(95%信頼区間[CI]:0.89-1.21)で、有意差は認められなかった。
両群のカプランマイヤー曲線は観察期間を通し、ほぼ一貫して重なっていた。
またこの結果は、「治療前尿酸値の高低」「eGFRの高低」「男女」を問わず一貫していた。 さらにQOLの改善も、両群間に有意差はなかった(EQ-5D)。
なお「痛風発作」は試験開始後2年間は両群間に差を認めなかったものの、その後、「通常治療」群で多く報告された(実数不明)。しかし原著者は、非盲検化という試験デザインに起因する報告バイアスの可能性を指摘している。
原著者はさらに、今回の検討にアロプリノールではなくフェブキソスタットを用いた場合の可能性も考察している。そしてわが国で高尿酸血症例を対象に実施されたRCTにおいて、同剤が有意に抑制していたのは「腎機能低下」だった(脳血管障害は増加傾向)[Kojima S, et al. 2019.]点、また頸動脈肥厚を抑制しなかった[Tanaka A, et al. 2020.]点に言及し、有用性には懐疑的な見方を示した。
本試験は英国国立健康研究所から資金提供を受けた。