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多次元的な貧困と健康支援─生活保護利用者のデータをもとに[プライマリ・ケアの理論と実践(162)]

No.5140 (2022年10月29日発行) P.10

西岡大輔 (大阪医科薬科大学医学研究支援センター医療統計室講師/南丹市国民健康保険美山林健センター診療所)

登録日: 2022-10-28

最終更新日: 2022-10-26

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SUMMARY
貧困は健康に影響を及ぼす社会的要因で,多次元的な困難を示す概念である。生活保護の利用者にも複合的な困難が背景にある。利用者による医療機関への頻繁な受診行動は,利用者の医療に対する援助希求行動の可能性がある。

KEYWORD
貧困
社会福祉学における多次元的な概念で,経済的な困窮を核に,社会関係からの排除,スティグマ,自己肯定感や社会活動の減少,権利の行使が困難なパワーレス・ボイスレスの状態が循環し,複合的な困難となる動的なプロセスを指す。

西岡大輔(大阪医科薬科大学医学研究支援センター医療統計室講師/南丹市国民健康保険美山林健センター診療所)

PROFILE
医師,社会福祉士,介護支援専門員。神戸大学医学部医学科卒業(2012年)。東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻に進学し博士(医学)を取得(2021年)。2021年4月より現職。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・指導医。同学会健康の社会的決定要因検討委員会委員。

POLICY・座右の銘
「背伸び」をすれば,次第にそれが「身の丈」になる(假屋崎省吾)

1 貧困と健康

貧困は健康に影響を及ぼす重大な社会的要因である。日本国内でも,貧困状態,特に経済的な困難を抱えている人ほど健康状態が好ましくなく,不合理な健康行動をとりやすいといったエビデンスが蓄積されている。たとえば,経済的に困窮している人ほど糖尿病の有病割合は高く,また経済的に困窮している人々では必要な受診を控える受診抑制が生じやすい。

そのような経済的な困難に対する救貧の制度として,日本では生活保護制度が整備されており,その利用者には最低生活費が現金支給され,医療や介護といった必要なサービスが自己負担なく享受できる経済的な生活の保障が実施されている。







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