急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)は,急性骨髄性白血病とは生物学的そして臨床上きわめて異なった性質を有するのが特徴である。APLは血液内科診療においても,凝固線溶異常を起因とする出血の早期死亡リスクが非常に高いがん救急の代表疾患であることから,形態学的にAPLを疑った場合は,PML::RARA融合遺伝子変異の結果が判明する前に,ベサノイドⓇ(トレチノイン)などによる分化誘導療法を中心とした寛解導入療法を,早急に開始する必要がある。
初診時,播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併していることが大半で,出血傾向が著明である。
末梢血中にアウエル小体を有する特徴的なファゴット細胞がほとんどの症例で認められ,確定診断には,PML::RARA融合遺伝子であるt(15;17)(q22;q21)をG-bandingないしFISH,RT-PCR法にて同定することである。
治療前の白血球数ないしAPL細胞(芽球+前骨髄球)数に応じて,治療法が異なってくる。共通するのは,ベサノイドⓇを全症例投与することである。白血球数ないし前骨髄球数を多く認める場合,イダマイシンⓇ(イダルビシン塩酸塩)とキロサイドⓇ(シタラビン)が併用投与される。
アントラサイクリン系抗癌剤とキロサイドⓇからなる地固め療法を計3コース行う。
地固め療法後に分子寛解が確認されたなら,RT-PCR法による骨髄中のPML::RARA mRNAをモニターしながら,1~2年程度の維持療法を行う。
再寛解導入療法は,トリセノックスⓇ(三酸化二ヒ素)を含むレジメンが第一選択となる。トリセノックスⓇで第二寛解を獲得したなら,骨髄中のPML::RARA mRNAを検査し,PML::RARA融合遺伝子が検出されない分子寛解であるかを確認する。分子寛解に到達したなら,寛解後療法として自家移植が勧められる。
全身状態が比較的良好な高齢者に対しては,若年者より強度は弱めて,若年者と同様に,治癒をめざした治療を行う。
残り1,527文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する