糖尿病性神経障害は,糖尿病に特有な細小血管症(網膜症,腎症を含めた三大合併症)のひとつであり,三大合併症の中で最も頻度が高い。病型として,遠位性左右対称性神経障害(感覚運動神経障害),有痛性神経障害,自律神経障害,局所性神経障害などがある。自律神経障害では,起立性低血圧,胃不全麻痺,下痢,神経因性膀胱,勃起障害(erectile dysfunction:ED),発汗異常,無自覚性低血糖などを呈する。
簡易診断基準として,①糖尿病性神経障害に基づくと思われる自覚症状(両下肢のしびれ,痛み,異常感覚),②両側アキレス腱反射の低下あるいは消失,③両側内踝の振動覚低下,があり,これら3項目のうち2項目以上を有する場合,神経障害ありと診断する。
自覚症状では,両足趾から症状が出現し,「足底に薄皮が1枚張っている」といった異常感覚,足趾・足底のしびれ・痛みなどの感覚異常を訴える。運動神経障害として,こむら返り,筋力低下がみられる。
治療の基本は良好な血糖コントロールであり,原則,HbA1c 7.0%未満の達成をめざす。血圧,脂質の心血管危険因子の適切なコントロール,禁煙などの包括的管理が重要となる。
異常感覚,しびれなどの感覚障害が治療対象になる。薬物療法として,アルドース還元酵素阻害薬であるキネダックⓇ(エパルレスタット)には,しびれ,知覚異常,こむら返りの改善作用が示されているが,疼痛抑制効果は期待できない。
一手目 :キネダックⓇ50mg錠(エパルレスタット)1回1錠1日3回(毎食前)
二手目 :〈特に高用量のメトホルミンを服用中の場合,一手目に追加〉メチコバールⓇ500μg錠(メコバラミン)1回1錠1日3回(毎食後)
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