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強膜炎,上強膜炎[私の治療]

No.5145 (2022年12月03日発行) P.46

慶野 博 (杏林大学医学部眼科学教室臨床教授)

登録日: 2022-12-02

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  • 2009年に施行された眼炎症疾患の全国疫学調査では,強膜炎は全体の6.1%であり,疾患別ではサルコイドーシス,原田病,急性前部ぶどう膜炎についで多い疾患である1)。炎症部位から,①上強膜炎,②前部強膜炎,③後部強膜炎,に分類される。強膜炎は点眼治療のみで軽快する症例もあれば,壊死性強膜炎のような免疫抑制薬の全身投与が必要な難治例もあり,その重症度は様々である2)

    ▶診断のポイント

    上強膜炎では角膜輪部付近,またはびまん性に強膜表層の血管拡張・蛇行がみられるが,眼痛を伴うことは稀である。一方,前部強膜炎では強膜の表在性,および深在性の充血を認め,激しい眼痛を伴う。また,後部強膜炎では滲出性網膜剝離,網膜・脈絡膜皺襞による視力障害を生じることがあるため,散瞳下での眼底検査を行い,後眼部の炎症所見の有無を確認する。

    非感染性の強膜炎では30~50%において関節リウマチなどの免疫関連疾患を合併することが報告されており,原因検索のための全身検査が必要となる。稀ではあるが,結核や梅毒の感染により強膜炎を発症することもあるため,初診時にツベルクリン皮内テスト,梅毒血清反応の結果を確認する。眼部帯状疱疹や眼外傷,網膜剝離術後のバックル感染に伴い強膜炎を発症する場合もある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方3)

    上強膜炎,前部強膜炎ではステロイドによる点眼療法が基本となるが,免疫疾患の合併例では重症例が多く,ステロイド点眼の減量中に再燃をきたすことも少なくない。壊死性強膜炎などの難治例では眼合併症の頻度が高く,視力予後不良となることが多いため,発症早期からステロイド全身投与や免疫抑制薬の導入が必要となる場合もある。免疫抑制薬の使用に際しては,副作用発生のリスク,投与開始後のモニタリングの重要性について,患者に十分に説明を行い,各専門科と連携をとりながら治療を継続していく必要がある。

    ステロイドや免疫抑制薬の全身投与に際しては,投与前のスクリーニング(高血圧や糖尿病の既往,結核・梅毒・ヘルペスウイルス・B型肝炎ウイルス感染の有無の確認,胸部X線など)が必要である。

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