Am J Med誌に12月2日、一見すると奇妙な論文が掲載された。新型コロナワクチン未/非接種者は接種者に比べ交通事故で入院するリスクが高いという観察研究である。筆頭著者はDonald A. Redelmeier氏。これ以前にも「アカデミー賞受賞役者と生存可能性」や「悪天候とアルコール関連致死的交通事故」、「満月とバイク事故死」などの相関を検討・報告している。所属組織はサニーブルック研究所(カナダ)。トロント大学の研究・教育病院である。
同氏らが解析対象にしたのは、運転免許、新型コロナワクチンのいずれも適格となる18歳以上の、オンタリオ住民1120万名強である。これらをワクチン接種データベースと入院データベースに照らし合わせ、ワクチン接種と交通事故入院(運転手・同乗者・歩行者)の相関を検討した。
その結果、ワクチン「未/非」接種群(16%)の交通事故入院率は接種群に比べ高値となり(912 vs. 530/100万)、未補正ハザード比(HR)は1.72(95%信頼区間[CI]:1.63-1.82)の有意高値となった。
このリスク上昇は、「年齢≧65歳」のサブグループを除き、「性別」や「居住地(街中 vs. 郊外)」「アルコール依存症の有無」「睡眠時無呼吸の有無」「抑うつの有無」などを問わず一貫して観察された(これらの属性は電子医療記録で確認)。
また多変量解析で「交通事故入院」の有意なリスクとなった「アルコール乱用」「抑うつ」「40歳未満」「男性」「睡眠時無呼吸」「社会経済状況:低」による補正後も、「ワクチン未/非接種」に伴う「交通事故入院」HRは1.48(95%CI:1.40-1.57)の有意高値だった。
Redelmeier氏らはワクチン接種と交通事故入院間に因果関係はないとした上で、「未/非接種」と「交通事故」双方の確率を上げる共通の要因、例えば「行政不信や自由信奉」、「リスクの誤評価」、「規制に対する反発」、などが存在する可能性を指摘している。
なお同氏らは論文を、「ワクチンを打っていない人は、室内では他人、屋外では周りの交通に気をつけるべきだろう」と結んでいる。