造血幹細胞レベルで生じた腫瘍化により,骨髄において巨核球が著増し,持続的な血小板増加がみられる。発症年齢の中央値は60歳前後である。約半数の症例は診断時無症状で,血液検査値異常で偶然見つかることが多い。症状は血栓症と出血が中心で,血栓性イベントとして脳梗塞や心筋梗塞,肢端紅痛症,血管性頭痛,めまい・頭痛などの微小血管障害による症状があり,出血性イベントとして消化管出血などが挙げられる。
WHO分類改訂版2017の診断基準1)では,血小板数45万/μL以上で本症を疑う。ドライバー遺伝子変異として,JAK2V617F変異,CALR変異,MPL変異を,それぞれ50~60%,20~30%,約3%に認める。特に,JAK2V617F変異は血栓症のリスク因子でもあるため,検査しておくことが望ましい。骨髄生検で前線維化期骨髄線維症と鑑別しておくことが重要である。
生命予後に大きな影響を与える二次性骨髄線維症や急性白血病への病型移行は10年で約3%以下であり,予後に主に関連するのは,脳梗塞や心筋梗塞などの血栓性イベント,消化管出血などの出血性イベントである。生命予後は比較的良好なため,これら血栓性・出血性イベントの予防が治療目標となる2)。血栓症のリスク評価としては,①60歳以上,②血栓症の既往,のいずれもない場合は低リスク群,いずれかがあれば高リスク群とされるが,最近ではJAK2V617F変異もリスク因子とされている。
治療に際しては,血栓症のリスクファクターの治療とともに,抗血小板療法および血小板数のコントロールが必要である。低用量アスピリンによる抗血小板療法は,低リスク群では心血管リスク因子,JAK2V617F変異陽性,めまい・頭痛などの血管運動性症状がある場合,および高リスク群で服用が勧められる。ただし,血小板数が100万/μL以上の場合には,血清中のvon Willebrand 因子(VWF)が消費され,出血による合併症のリスクが高くなるため,VWF活性が30%未満である場合は,アスピリンの併用は控える。
細胞減少療法による血小板数のコントロールとしては,ハイドロキシウレア,アナグレリド,インターフェロンアルファ(わが国では保険適用外)が挙げられる。高リスク群では,上述の抗血小板療法に加えて,細胞減少療法を追加し,血小板数を40万~60万/μL以下にすることで,血栓症のリスクが低下する。また,臨床経過中に血小板数が150万/μL以上に増加したり,進行性の骨髄系細胞の増殖(脾腫の増大等)などが出現した場合も細胞減少療法の適応となる。ハイドロキシウレア,アナグレリドともに血栓症の発症が有意に減少することが示されているが,ハイドロキシウレアは,二次性白血病のリスクの懸念もあることから,若年者では投与をできるだけ控える。若年者では,白血病誘発性のないアナグレリドが初回治療薬として推奨される。ハイドロキシウレアでは,皮膚潰瘍や口内炎に,アナグレリドでは,頭痛,動悸,貧血,下痢,末梢神経障害などの有害事象に注意する。
残り992文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する