高血圧発症には環境因子だけでなく遺伝性の因子が関与する。しかし遺伝性因子が及ぼす「影響の大きさ」は必ずしも明らかでない。この点を東アジア人で明らかにすべく韓国のSeoyun Jang氏(ソウル大学小児病院)らは、「親における高血圧の有無」が「子供の高血圧有病リスク」に与える影響を解析した。その結果、両親とも高血圧の子供ではリスクが4倍以上まで高まっている可能性が明らかになった。Hypertens Res誌12月2日掲載の論文から紹介したい。
解析対象となったのは、10歳から18歳の男女3996名とその父親、母親それぞれ3197名ずつである。政府機関により毎年1回実施される全国的横断調査 "KNAHANES" の、2008~18年データから親子とも血圧値が明らかな全例が抽出された。
高血圧の定義は、16歳未満では「収縮期血圧、拡張期血圧の少なくともいずれかが95パーセンタイル値超」、16歳以上は「収縮期血圧≧140mmHg、拡張期血圧≧90mmHgの少なくともいずれか」とした。また降圧薬服用例は血圧値にかかわらず「高血圧」に分類した。
まず、親の高血圧有無別に見た子供の高血圧有病率を見ると、「両親とも非高血圧」で6.3%、「父親のみ高血圧」で11.1%、「母親のみ高血圧」は13.1%、「両親とも高血圧」で23.9%となっていた。
次にこの数字から「子供の高血圧有病オッズ比」(vs. 両親とも非高血圧)を求めると以下のようになった。
男子 女子
両親とも高血圧 5.0 4.6
母親のみ高血圧 2.2 2.3
父親のみ高血圧 1.7 2.2
(対「両親とも非高血圧」。子供の年齢調整後。いずれも有意)
この結果は、年齢に加え、肥満度や代謝、身体活動性や摂取エネルギー・食塩で補正後も、以下の通り大きく変わらなかった。
男子 女子
両親とも高血圧 4.2 4.2
母親のみ高血圧 2.2 2.3
父親のみ高血圧 1.6 2.2
(対「両親とも非高血圧」。いずれも有意)
環境的因子の影響を除外した結果ゆえ、この数字こそが親の高血圧「ある・なし」により子供の高血圧リスクが受ける影響だとJang氏らは考えている。
さて青少年の血圧高値は、それに伴う成人後の心血管系疾患発症リスク上昇が報告されている[Falkstedt D, et al. 2008] 、[Högström G, et al. 2015]。そのためJang氏らは、親の血圧状態から高血圧高リスクと明らかになった小児・青少年では、定期的な血圧測定と早期診断・治療が必要だと考えているようだ。
本研究には報告すべき利害相反はないとされている。