【質問者】西本 隆 西本クリニック院長
【血清クレアチニン値とともに,血圧・尿蛋白(尿クレアチニン比)・併用薬の評価が必須】
漢方生薬「黄耆」を含んだ漢方エキス製剤や,単品でのオウギ末の使用により,慢性腎臓病(CKD)患者の治療において,血清クレアチニン値の低下,eGFRの改善効果の報告が散見されるようになっています1)。漢方エキス製剤で黄耆を含むものとしては,七物降下湯や防已黄耆湯などが挙げられます。
自験例では,症例報告レベルで七物降下湯の降圧作用と血清クレアチニン値の低下作用を複数例経験しました2)。その後,名古屋市立大学大学院薬学研究科生薬学分野 牧野利明教授とともに参画した基礎的検討では,ラットCKDモデルでの七物降下湯の腎保護効果を認めました3)4)。さらに黄耆が培養の腎尿細管上皮MDCK(Madin-Darby canine kidney)Ⅱ細胞におけるDDAH2(ジメチルアルギニン-ジメチルアミノヒドロラーゼ-2)酵素の発現を亢進することを見出し,黄耆の成分でフォルモノネチンとカリコシンが活性成分であることも報告しました5)。
DDAH2酵素は,悪玉のADMA(非対称性ジメチルアルギニン)の分解を促進することが知られています。基礎研究からは血管内皮の一酸化窒素(NO)バランスを改善し,血管内皮細胞を保護することが期待されます。
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