膀胱損傷と尿道損傷は医原性と外傷性に分類される。陰茎折症は勃起時に陰茎へ鈍的外力が加わり,陰茎海綿体白膜が断裂することにより生じる陰茎損傷であり,主に性交渉中に生じる。
医原性の膀胱損傷は主に産婦人科手術,泌尿器科手術,一般外科手術において起こる。術中に診断されれば修復術を行う。術中の膀胱損傷の有無の確認には生理食塩水(150mL程度)の膀胱内注入が有効である。術中に診断されなかった場合は,ドレーンが留置されていれば尿道カテーテル抜去後にドレーンの排液量が増加する。ドレーンが留置されていない場合は尿道カテーテル抜去後に腹水の貯留が起こる。これらの現象により膀胱損傷が疑われ,逆行性尿道造影や造影CTで診断される。
外傷性の膀胱損傷は腹膜外破裂と腹膜内破裂にわけられる。外傷性の膀胱損傷は,飲酒などにより膀胱が尿で緊満した状態で発生することが多く,膀胱頂部が好発部位である。外傷性の場合も逆行性尿道造影や造影CTで診断される。
外傷性尿道損傷は比較的稀である。圧倒的に男性が多く,鈍的外傷に伴うことがほとんどである。前部尿道の外傷は会陰部の鈍的外傷(騎乗型外傷)による球部尿道外傷,後部尿道の外傷は骨盤骨折に伴うことがほとんどである。
医原性尿道損傷のほうが頻度が高く,外傷性と同じく圧倒的に男性に多い。尿道カテーテル挿入時やバルーンへの蒸留水注入により損傷する頻度が最も高い。また,経尿道的手術の際にも起こりうる。逆行性尿道造影や尿道鏡検査が診断に有用である。
受傷時に本人やパートナーが「ポキッ」という破裂音を聞き取ることが多い。羞恥心と不安で押しつぶされそうな患者を気遣いながらも,受傷した状況の詳細を問診する必要がある。白膜断裂に伴う血腫により,陰茎の腫脹と変色を認めることがある。触診で白膜断裂部の圧痛を認めることもある。血腫によって陰茎が断裂部の反対側に弯曲することがある。超音波検査やMRIが診断に有用である。また,稀に尿道損傷を合併することがある。肉眼的血尿,尿閉などの症状を認める場合は,尿道損傷の合併を念頭に逆行性尿道造影法や尿道鏡検査を行う。
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