抗細菌薬不応性の感染症状がみられる場合は,エンピリック治療の開始を考慮し,侵襲性カンジダ症のリスク因子を評価する
腹膜炎におけるカンジダ属の培養検査において,ドレーン挿入後24時間以降にドレナージチューブから検出されたカンジダ属は,コロニゼーションの1箇所として扱う
β-D-グルカンは,グロブリン製剤の使用など様々な要因で偽陽性を示すため,注意が必要である
複数箇所におけるカンジダ属の検出,またはβ-D-グルカン陽性が,エンピリック治療の開始基準である
侵襲性カンジダ症は,生体の防護機能が低下した患者にしばしばみられる。代表的な侵襲性カンジダ症であるカンジダ血症は,生命予後にも大きな影響を及ぼし,その粗死亡率は35~67%に及ぶとされ1)~4),速やかな抗真菌薬治療が必要である。しかし,細菌と比べて培養までに長い時間を要するため,抗細菌薬不応性の感染症状がみられる場合は,カンジダ血症などの侵襲性カンジダ症が確定診断される前に,エンピリック治療の開始を考慮しなければならないことがある。
一方で,喀痰や糞便,尿などからもしばしばカンジダ属は検出されるが,必ずしも治療対象になるとは限らない。そこで本稿では,非好中球減少における侵襲性カンジダ症のエンピリック治療の開始基準について概説する。
侵襲性カンジダ症のエンピリック治療を考慮する際には,侵襲性カンジダ症を生じるリスク因子を評価する必要がある。表1 5)に示したように,リスク因子は広域抗菌薬の使用,中心静脈カテーテルの挿入,ステロイドの使用,悪性腫瘍の存在など多岐にわたる。Ostrosky-Zeichnerら6)は,侵襲性カンジダ症の予測因子として,抗菌薬の全身投与や中心静脈カテーテルの挿入に加え,完全静脈栄養(TPN),透析,外科手術,膵炎,ステロイドの使用,免疫抑制薬の使用のうち,いずれか2つ以上の要因を有する場合であるとしている。
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