【質問者】細井雅之 大阪市立総合医療センター糖尿病内科部長
【高齢者へは一律に勧めるべきではなく,個別に益・不利益のバランスで判断する】
人間ドックの対象疾患は,主に生活習慣病とがんです。生活習慣病健診は,高齢者でも,生活習慣病の診断と治療,介護予防につなげるために年齢によらず有効とされます。しかし,がん検診については,加齢に伴い恩恵が減り不利益性が高くなることが知られており,不利益性が有益性を上回る場合は,少なくともがん検診項目を多く含む健診コースは避けたほうがよいでしょう。
がん検診は,健康増進法による対策型を安価で受診できますが,決められた検査法による5つのがん種に限られ,受診日や施設を自由に選択できない場合もあります。一方,任意型の人間ドックでは,検査をまとめて行え,受診日や施設,検査法が選択できます。特に検査法では,対策型で推奨されていなくても近年有効性が示されるようになった検査(肺がんに対する低線量CTや乳がんの乳腺エコー併用検診など)や,個別のがんリスクに対する検査(肝臓がんリスク者に対する腹部エコーなど)を選択できます。ただし,検診における科学的根拠が示されていない検査(PET-CTや腫瘍マーカーなど)も多く,その選択には検査によって不利益が生じ得ることを受診者が理解する必要があります。
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