皮膚(毛囊,汗腺,皮脂腺などの皮膚付属器を含む)および皮下組織(脂肪組織,血管,筋膜,筋など)の感染症である。皮膚付属器が病原菌の侵襲門戸となるほか,皮膚のバリア機能が破綻した創傷から侵入する場合や,あるいは血行性に発症する場合もある。皮膚常在菌であるブドウ球菌や連鎖球菌を起因菌とするものが主体であるが,免疫不全状態や特殊環境から様々な病原菌が関わる場合もあり,その場合は有効な抗菌薬の選択に注意を要する。重症皮膚軟部組織感染症である壊死性筋膜炎やガス壊疽では,急激な全身状態悪化の経過をたどり,致死的となる危険性がある。
主な症状は,局所の炎症症状による疼痛,腫脹,発赤,熱感などであるが,重症度が増すと,発熱,意識障害,発汗,さらには頻脈,血圧低下などショック症状を呈する場合がある。壊死性筋膜炎では強い疼痛を生じ,皮膚に紫斑,壊死を生じることがある。ガス壊疽では局所の握雪感を呈する。
皮膚付属器からの感染であれば起因菌が容易に推定できるが,侵入門戸が不明の場合あるいは創傷受傷からの経過が長い場合は慎重な聴取が必要である。ヒトおよび動物咬傷では口腔内常在菌,淡水曝露後にはAeromonas hydrophila,海水曝露後にはVibrio vulnificus,食肉業者においては類丹毒,ガス壊疽ではClostridium属(ウェルシュ菌など)や非Clostridium性ガス産生菌,などの特殊な起因菌が原因となることがある。
基礎疾患の有無についても免疫不全状態か否かの判断材料として重要である。
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