手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を用いた前立腺全摘除術(robotic-assisted radical prostatectomy:RARP)は,わが国では2012年4月に保険適用となり,15年9月で導入台数は200台を突破した。前立腺は狭い骨盤の奥にあり,尿道括約筋,勃起神経と接するため,術後に尿失禁や性機能障害が起こりうる。これに対し,ロボットアーム先端部の細かく自由自在な動きと精度の高さを用い,がんの根治とともに術後QOLの向上として尿禁制改善と,可能な症例では陰茎海綿体神経温存術式による術後性機能保持をめざした手術が行われている。
性機能温存に関しては,単に温存,非温存という選択にとどまらず,がんの存在部位や悪性度などの再発リスクに応じてside specificに,かつ複数の剝離層を使いわけるといった精緻な操作が行われ,良好な成績が報告されている1)。
このRARPと,従来施行されていた腹腔鏡下前立腺全摘除術(laparoscopic radical prostatectomy:LRP)との比較について,14年末までの無作為比較試験のみを対象とした初のメタアナリシスでは,断端陽性率と生化学的無再発生存率で有意差はないものの,勃起機能回復率と尿禁制回復率はRARP群で有意に良好であり,機能的アウトカム(尿禁制,勃起能)においてRARPのほうがLRPに比べ有効性が高いことが示されている2)。
【文献】
1) Tewari AK, et al:BJU Int. 2011;108(6 Pt 2):984 -92.
2) Allan C, et al:Urol Int. 2016;96(4):373-8.
【解説】
今本 敬 千葉大学泌尿器科講師