多発性筋炎(polymyositis:PM)は,四肢近位筋の対称性筋力低下をきたし,骨格筋の炎症,変性,再生を主病変とする,原因不明の特発性炎症性筋疾患である。筋炎症状に加え,ゴットロン徴候などの特徴的な皮膚症状を伴う場合には皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)と呼ばれる1)2)。間質性肺炎,関節炎,消化管障害,心筋障害など,筋以外の多臓器障害も合併する全身性自己免疫疾患でもある1)2)。
わが国の年間発病率は5~10/100万人,有病率は2~5/10万人である。成人では1:2の割合で女性に多い。あらゆる年齢層に発症するが,小児期(5~14歳)と成人期(35~64歳)をピークとする二峰性分布を示す1)2)。
臨床症状(筋力低下,特徴的な皮膚症状),検査成績(血清筋原性酵素値,筋電図,筋生検所見)から,BohanとPeterの診断基準や厚生労働省自己免疫疾患調査研究班の改訂診断基準などに基づいて診断される。
本疾患の病像は多様で,その病型分類〔Ⅰ型:定型的PM,Ⅱ型:定型的DM,Ⅲ型:悪性腫瘍合併PM/DM,Ⅳ型:小児PM/DM,Ⅴ型:他の膠原病との重複症候群,Ⅵ型:その他(封入体筋炎など)〕は治療方針の決定,予後の推定に有用である1)2)。
筋炎に特異的な自己抗体〔抗ARS(aminoacyl tRNA synthetase)抗体,抗SRP抗体,抗MDA 5(melanoma differentiation-associated gene 5)抗体など〕は臨床病態と密接に関連し,診断,病型分類など,臨床的に有用である。
治療の目標は,筋炎の鎮静化,筋力の回復,日常生活動作の回復と,合併する臓器障害の改善にある3)4)。
副腎皮質ステロイドが一般に筋炎の第一選択薬として用いられる1)~4)。成人発症の典型的PM/DMにはプレドニゾロン(PSL)1.0~1.5mg/kg/日(PSL 40~60mgを1日3回分割で内服投与)を初回投与量とする。2~4週間継続投与後,筋力の改善と血清creatine kinase(CK)を指標として1~2週ごとに10%の割合で漸減する。PSL 15mg/日以下で再燃することがあり,以後の減量は慎重に行う。血清筋原性酵素値の上昇が持続する場合には,ステロイドを増量するか,免疫抑制薬を併用する。
免疫抑制薬3)4):ステロイド療法に抵抗性を示したり,ステロイドの副作用のため減量・中止が必要な症例では,免疫抑制薬が併用される。近年,ステロイド減量効果(steroid sparing effect)から,ステロイド療法開始と同時に積極的に使用される。
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