わが国でもCOVID-19感染は収束に向かいつつある。そこで臨床家として気になるのが後遺症、いわゆる"Long COVID"だろう。わが国の単施設が実施した最新のアンケート調査では30.5%が感染回復1年後も何らかの異常を報告している[Morioka S, et al. 2023]。またCOVID-19感染後遺症としては「疲労」や「Brain Fog」「味覚障害」などがよく知られているが、心血管系の不調も見逃せない[Raman B, et al. 2022]。ではCOVID-19感染により心血管系障害リスクはどれほど上昇するのだろう? その点を明らかにすべく実施されたメタ解析が、3月4日から米国ニューオーリンズで開催された米国心臓病学会(ACC)学術集会で報告された。Joanna Lee氏(デイヴィッド・トヴィルディアーニ医科大学、米国)の報告を紹介する。なお同氏はまだ博士号未取得の医学部生だという。
解析対象となったのは、18歳以上を対象にCOVID-19感染後の症状として心血管系障害関連を報告している11報(588万5453例)である。前向きコホート研究が7報、後方視的研究が3報、症例・対象研究が1報だった。報告例数は700万例から数十例までとバラツキは大きい。ただし非ランダム化研究の質指標であるニューカッスル・オタワ・スケールは、いずれの研究も「良」とされる「7点以上」だった。
対象患者の平均年齢は26.5歳から63歳と幅広く、重篤後遺症に限った1報告を除き中等度以下の症状も報告されていた。COVID-19感染からの観察期間は3カ月前後が最も多かった(最短「1~2カ月」、最長「11.6カ月」)。なおワクチン接種の有無、接種者の割合などは不明だという。
これら11報を変量効果モデルでメタ解析した結果、COVID-19感染後に何らかの心血管系障害が発生するオッズ比(OR)は非感染者に比べ、2.35の有意高値となった(95%信頼区間[CI]:1.20-4.60)。ただしバラツキの指標であるI2は91%ときわめて高い。
次に感度分析として最も重み付けの大きかった報告(14.0%)を除外して再計算したが、やはりORは2.98(95%CI:1.03-8.62)の有意高値が維持された(I2:92%)。さらに2番目に重み付けの多かった1報(13.4%)を除外した感度分析でもORは有意高値で(OR:2.57、95%CI:1.74-3.80)、I2も51%となった。
心血管系障害の内訳を見ると、症状としては「胸痛」と「労作時呼吸困難」「疲労」「動悸」が多く、疾患名では「不整脈」「心不全」「血栓症」「心筋炎」、画像所見は「心臓MR上LGE(心筋線維化指標)陽性」と「心エコー上GLS(左室機能指標)低下」が多かった。
これらのリスク因子は解析できなかったという。
本解析について開示すべき利益相反はないとのことである。