SUMMARY
地域住民の健康に対する意識の向上を目的として,健康相談の場を提供するために「ひよっこドクターのほけんしつ」プロジェクトが新潟大学医学部の学生を中心に結成された。
KEYWORD
継続性
大学生活は有限であり,経時的にサークルが衰退することが危惧される。学生主体のプロジェクトにおいて,我々教員は温かく見守る立場であるとともに,サークルの勧誘活動やプロジェクトの方向性を見失わないように振り返りを促していく必要がある。
PROFILE
上越総合病院で後期研修修了。現在は,大学病院で病棟と外来,約130床の地域の医療機関で外来,豪雪地帯の診療所で訪問診療を行いつつ,学生と一緒に地域医療学を学ぶ教員。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・指導医。
POLICY・座右の銘
感謝,感謝,感謝
筆者は2021年8月,無印良品では初めてとなる地域住民に対する保健活動「まちの保健室」が,無印良品直江津店で展開されることを知った。直江津は筆者の地元でもあることから,何らかの形で自分自身もこの保健室活動に協力したいと思い,特にプランはなかったが,さっそく挨拶に伺った。ほぼ時を同じくして,当大学医学部医学科の学生である中島寛音さん(当時3年生)が野村総研の小論文コンテストで決勝に進出した。中島さんは小論文の中で,「Student doctor(地域住民にも親しんでもらえるよう『ひよっこドクター』と呼称)が地域住民に対して健康相談を行うことが,地域住民の健康に対する意識変容につながり,学生も地域に愛着を持つきっかけになりうる。また,地域の医療機関に勤務する指導医がひよっこドクターの指導を行うことにより,指導経験が増える」ことを述べた。中島さんはこのひよっこドクターのほけんしつプロジェクト(以下,ほけんしつ)の実現のため,当教室を訪れたのだった。
新潟県は医師偏在指標が全国最下位であり1),医師の確保が急務である。このほけんしつの活動により,学生が新潟県に愛着を感じるのではないかと期待し,ほけんしつのコアメンバーを学生から募り,これまで表1のような活動を行ってきた。