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涙囊炎[私の治療]

No.5161 (2023年03月25日発行) P.49

三村真士 (兵庫医科大学眼科非常勤講師,東邦大学医療センター佐倉病院眼科非常勤講師,オキュロフェイシャルクリニック大阪院長)

登録日: 2023-03-23

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  • 結膜から鼻腔へと涙液を排泄する涙道の中間部,涙囊に炎症をきたした状態である。その結果,涙囊内に粘液性分泌物の貯留をきたす。先行する涙道の通過障害がほとんどの涙囊炎において認められ,基本的に原発性(加齢性)であるが,稀にサルコイドーシス,涙囊腫瘍,異物迷入などによる続発性もある。
    一般的には,涙囊内貯留物が結膜へ逆流して排泄されるが,時に炎症が急性化し,涙囊が急速に拡張,痛みを伴った涙囊周囲の腫脹を認めることがある(急性涙囊炎)。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    持続的な流涙と眼脂が主で,溢れた涙液により眼瞼炎をきたしていることも多い。涙囊部を圧迫すると,内容物が涙点から逆流するが,感染を伴う場合は,色調が透明から黄色~茶色へ変化する。急性涙囊炎の場合は,涙囊周囲の発赤や痛みを伴い,涙囊部が腫大する。

    【診断】

    確定診断には,涙囊内の炎症を証明する必要がある。涙点から生理食塩水を注入する通水検査では,眼脂の逆流をもって診断するが,現在では直径0.9mm以下の涙道内視鏡を涙点から挿入して,涙囊粘膜を直接観察することで,より詳細な診断が可能である。炎症の初期には,粘膜は充血,腫脹しており,ムチンを主体とする粘液性分泌の亢進を認め,中期~晩期には粘膜は疲弊化して白色線維化する。同時に,腫瘍,異物の有無も注意深く検索する。時に涙囊内に結石の形成を認めることがあるが,これはリン酸カルシウムを主成分とする場合が多く,アクチノマイセスに代表される微生物の温床となり,涙囊炎の悪化につながる。涙囊周囲組織の影響が疑われる場合は,CTもしくはMRIを撮影するが,CTでこの結石が撮像されることがある。

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