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【文献 pick up】認知症リスクが大きい若年AF例なのに、OAC服用による認知症リスク軽減は見られず?

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-03-24

最終更新日: 2023-03-24

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心房細動(AF)が認知症のリスク因子と目されて久しい。平行して、経口抗凝固療法(OAC)による認知症抑制作用を示唆する観察研究も報告されている[Bunch TJ. 2020。しかし最新の研究によれば、AFと認知症リスク、OAC服用間の関係は年齢により異なるようだ。若年者ではAF例の認知症リスクが高いにもかかわらず、OACによる認知症抑制が期待できない可能性がある。

まず「AFに伴う認知症発症リスクは若年者のほうが高い」。これはNisha Bansal氏(Washington大学、米国)らが3月8日、JAHA誌で報告した。

同氏らが解析対象としたのは、米国民間保険会社データベースに登録された、2010年以降にAFと診断された98484例と、同数の非AF対照群である。対照群は年齢・性別、データベース登録日、登録時の推算糸球体濾過率でマッチされている(腎機能が認知症発症に及ぼす影響を除外するため)。

平均年齢は73.6歳、女性が44.8%を占めた。AF群のOAC服用率は12.5%のみだった。

これらを3.3年(中央値)追跡した結果、認知症発生率はAF群で2.79/100例・年、非AF群で2.04/100例・年。「死亡」を競合リスクとした諸因子補正後の部分分布ハザード比(sHR)はAF群で1.1695%信頼区間[CI]1.131.20)、4年以上観察例に限るとsHR1.2295%CI1.151.30)となった。

注目されるのは、年齢の高低で認知症リスクに有意差があった点である。若年者のほうがリスクが高い。65歳未満では認知症発症sHR1.6595%CI1.292.12)だったのに対し、65歳以上ではsHR1.0795%CI1.031.10)だった(交互作用P<0.001)。

一方Alvi A. Rahman氏(McGill大学、カナダ)らは、「OAC服用に伴う認知症リスク軽減は高齢者のほうが強いようだ」という観察研究を、20221229日のNeurology誌で報告している。

こちらの対象は、英国プライマリケア医データベース(UK Clinical Practice Research Datalink)に登録された非弁膜症性AF 142227例。12.1/1000例・年が認知症を発症した。

OAC服用と認知症発症の関係を検討すると、75歳以上ではOAC「服用」に伴い認知症発症の多変量解析HR0.8495%CI0.800.89)と「非服用」に比べ有意低値だった。一方、75歳未満ではHR0.9995%CI0.90-1.10)となり「非服用」と有意差を認めない。

なお同様の結果は、60歳の上下で比較したスウェーデンの観察研究からも報告されている[Friberg L, et al. 2019

「認知症抑制」という観点からAFを考えるとすれば、示唆に富むデータかと思われる。

Bansal氏らの研究は、米国心肺血液研究所から資金提供を受けた。 

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