1 肩こりや首の痛みからくる緊張型頭痛
肩こりや首の痛みからくる緊張型頭痛には,西洋医学的には消炎鎮痛薬の湿布や塗り薬,筋弛緩薬,解熱鎮痛薬の内服などが用いられる。鎮痛薬を長期に使用すると,鎮痛薬の使用過多による頭痛を引き起こす原因となりおすすめしない。緊張型頭痛では温めると痛みが楽になる場合も多く,筋肉の緊張をゆるめる作用のある葛根湯や血流を良くする桂枝茯苓丸が有効である。
2 片頭痛
予防薬としては以前から使用されていた抗うつ薬,抗てんかん薬,Ca拮抗薬,β遮断薬に加え,新しく発売された抗CGRP抗体薬がある。これまでの予防薬では,効果までに2~3カ月かかるという問題や,眠気やだるさの副作用の問題,妊娠可能年齢の女性には使用しにくい(β遮断薬を除いて)問題点もある。また,新しい抗CGRP抗体薬では経済的負担の問題もある。
急性期治療薬としては解熱鎮痛薬,制吐薬,トリプタン製剤,ジタン系製剤が使用されるが,これらの薬剤においても眠気,だるさ,胸部症状,めまいなどの副作用の問題があり,使用が難しい患者もいる。
これらの欠点を補う治療薬として,副作用が少なく,経済的負担も少ない漢方薬がある。片頭痛は若い女性に多く,冷え性を伴うことが多い。ひどい場合には嘔気・嘔吐を伴うため,温めて痛みをとり,嘔気を抑えることのできる呉茱萸湯が有効である。
女性では月経前後に片頭痛が起こり,月経不順のため,月に2回月経が来ると,それだけで頭痛の頻度も増えて薬の使用頻度も増える問題点もあるが,西洋薬の治療ではこの月経不順自体には効果がない。そこで月経関連片頭痛では,月経痛や月経不順を改善する当帰芍薬散や桂枝茯苓丸の併用が有効である。
3 天候の影響を受ける頭痛
片頭痛を含む一次性頭痛では,気温や気圧,湿度の変化など,気候の影響で頭痛が悪化する患者がいる。最近では頭痛以外でも,めまいや倦怠感など様々な症状が出る疾患として,「気象病」あるいは「天気痛」という概念も出てきている。西洋医学的には片頭痛に一般的な解熱鎮痛薬を投与する場合には,トリプタン製剤,あるいは乗り物酔いの防止に使われるジフェンヒドラミンサリチル酸塩・ジプロフィリン配合錠などの中枢性の制吐・鎮暈薬が使用されるが,どれも対症療法である。一方,漢方薬は予防的にも使用でき,頓服的に用いても効果がある。台風や梅雨時などの天候の影響で悪化する頭痛には,五苓散が有効である。
4 高齢者の頭痛
高齢者の頭痛の原因は様々であるが,片頭痛の慢性化,緊張型頭痛や脱水や気候の変化への適応力の脆弱化,体力の低下,運動不足,フレイルなどが原因として挙げられる。これらに対し,一般的な鎮痛薬や筋弛緩薬,抗不安薬などが処方される場合が多いが,高齢者では胃痛などの消化器症状,めまいやふらつき,転倒などの副作用が出やすいことに注意が必要である。一方,漢方薬ではこれらの副作用が少ないのが特徴である。高齢者で胃腸虚弱があり,乾燥気味で目の充血やのぼせ,高血圧気味の頭痛には釣藤散が有効である。
5 ストレスによる頭痛
ストレスにより緊張型頭痛や片頭痛,神経痛が起こったり悪化したりする場合がある。西洋医学的には鎮痛薬やトリプタン製剤,抗不安薬や抗うつ薬,神経痛には抗痙攣薬などが使用される。抗痙攣薬や抗不安薬,抗うつ薬には,眠気,だるさ,便秘などの副作用が出る場合がある。一方,漢方薬ではこれらの副作用が少なく,ストレスで悪化する頭痛には抑肝散が有効である。