2型糖尿病治療薬として登場後その減量作用が注目され、わが国でも「肥満症」への使用が可能になったGLP-1受容体作動薬(RA)だが、左室機能低下例(±糖尿病)では心不全増悪リスク上昇の可能性が示された。4月4日、J Card Fail誌に掲載されたJoão Sérgio Neves氏(ポルト大学、ポルトガル)らによる解析を紹介したい。
なお「肥満」は心不全発症リスクであり、BMI「5kg/m2」高値に伴う心不全発症相対リスクは1.41(95%信頼区間[CI]:1.34−1.47)であることが、前向き観察研究23報(64万7388例)のメタ解析から明らかになっている(リスク上昇はBMI「23~24kg/m2」超から開始)[Aune D, et al. 2016]。
今回Neves氏らが解析対象としたのはランダム化比較試験2報、すなわち2型糖尿病(±心血管系疾患)を対象とした"EXSCEL"(1万4752例)と左室機能低下心不全(±2型糖尿病)が参加した"FIGHT"(300例)である。
これらにおいて試験開始時の左室駆出率(EF)別に、GLP-1-RAが心不全入院リスクに及ぼす影響を検討した。
その結果まずEXSCEL試験では、EF「>55%」例と「40−55%」例ではGLP-1-RA群でプラセボ群に比べ心不全入院リスクの減少傾向を認めたのに対し(オッズ比[OR]は順に0.73[95%CI:0.48−1.13]、0.77[95%CI:0.50−1.20])、EF「<40%」例では逆にGLP-1-RA群で、心不全入院リスクは有意に高くなっていた(OR:1.70、95%CI:1.02−2.83)。
さらに、このEFの高低が心不全入院リスクに与える交互作用は有意だった(P=0.027)。
EXSCEL試験にFIGHT試験の結果を併合しても同様で、「EF<40%」例ではGLP-1-RA群における心不全入院ORが1.49(95%CI:1.05−2.10)の有意高値だった。
このような結果をもたらす機序としてNeves氏らは、GLP-1-RAによる細胞内cAMP濃度上昇と心拍数増加が悪影響を及ぼした可能性を挙げている。
ただし今回の解析結果はあくまでも探索的研究にすぎず、仮説を提示するにすぎない。この点にも同氏らは留意を促している。
本解析はポルトガル政府内「科学技術財団」からの資金提供を受けた。