2021年に韓国から報告されたランダム化比較試験(RCT)"HOST-EXAM"では、抗血小板薬2剤併用(dual antiplatelet therapy:DAPT)終了後のクロピドグレル単剤がアスピリン単剤に比べ、「死亡・冠動脈イベント・脳卒中・大出血」(1次評価項目)リスクを相対的に27%、有意に低下させていた。
では糖尿病(DM)合併例に限っても、クロピドグレルのこの有用性は維持されるだろうか。ちなみに2020年にLancet誌で報告されたRCT 9報(4万2108例)メタ解析では、クロピドグレルはアスピリンに比べ心筋梗塞を相対的に19%、脳卒中を7%有意に減らすものの死亡リスクの減少はわずかで、かつ有意差に至らなかった(オッズ比:0.98)。なお「出血」のハザード比(HR)は1.06、「大出血」のHRは0.90で、いずれも有意差なしだった。
それに答えるHOST-EXAM試験データが、後付解析ながらJAMA Cardiol誌に4月12日付で掲載された。
HOST-EXAM試験の対象は韓国で薬剤溶出ステント(drug-eluting stent:DES)留置後、6~18カ月間のDAPTを継続できた5438例である。DESの適応となった基礎疾患は問わない(安定冠動脈疾患は約25%)。
クロピドグレル75mg/日群とアスピリン100mg/日群にランダム化され、非盲検下で24カ月観察された。
今回、試験開始時にDMを合併していた1860例と非合併3578例の2群に分け、クロピドグレルとアスピリンを比較した。DM例と非DM例はランダム化時に層別化されているため、DM合併の有無を問わず、クロピドグレル群とアスピリン群の背景因子に差はない。
その結果、上述「1次評価項目」のクロピドグレル群におけるHRはDM合併群で0.69(95%信頼区間[CI]:0.49−0.96)と有意に低く、DM非合併群でも0.76(0.58−1.00、P=0.046)の有意低値だった(交互作用P=0.65)。
ただしクロピドグレルに伴う絶対リスクの減少幅はDM例のほうが大きく、クロピドグレル群におけるNNT(治療必要者数:1例で治療効果を確認できるまでに必要な治療例数)は、非DM例の「63」に対しDM例では「37」だった。
また「血栓塞栓性イベント」と「大出血」「全出血」という形に分けて比較しても、DM合併の有無を問わずクロピドグレル群で減少傾向を認めた。HOST-EXAM試験の対象ではクロピドグレルに伴う「血栓リスクと出血リスクのトレードオフ」は生じなかったと、原著者らは考察している。
一方死亡リスクは、先述メタ解析とは異なりクロピドグレル群で上昇傾向を認めた。「総死亡」HRはDM合併例で「1.24」、非合併例も「1.62」である(有意差なし)。
この点につき原著者らはHOST-EXAM試験本論文において、クロピドグレル群におけるがん死増加傾向を報告し「偶然、未診断のがんがクロピドグレル群で多かった」可能性を指摘している(アスピリンによる抗がん作用には否定的スタンス)。
本試験は、製薬会社4社(Chong Kun Dang、Samjin、Hanmi、Daewoong)による企業連合から主たる研究資金の提供を受けた。