細菌が角膜内皮実質に侵入,増殖した結果,前眼部で強い炎症が誘発されている状態である。何らかの原因で生じた角膜上皮障害が発症誘引となる。
膿性眼脂,結膜充血,毛様充血,病巣には角膜潰瘍か角膜膿瘍,あるいはその双方がある。病巣周辺の角膜は,上皮浸潤,実質浮腫,実質膿瘍などで不透明になっている。炎症の強い症例では,前房蓄膿を伴う。
患者の年齢,手術歴,コンタクトレンズ(CL)装用歴などの眼科的既往歴に加え,眼表面で特定の細菌が増殖する可能性のある病歴,すなわち涙道閉塞の既往,何らかの抗菌点眼薬の長期使用歴,長期入院歴,および高齢者施設入所歴を問診で引き出す。
角膜擦過物の塗抹検鏡ができる場合は,検体のグラム染色をし,塗抹像に細隙灯顕微鏡所見と問診で得られた情報を加味しながら,起炎菌を推定する。塗抹検鏡ができない場合,あるいはできたものの微生物を検出できない場合は,問診で得られた情報と細隙灯顕微鏡所見から起炎菌を推定する。
グラム陽性球菌が検出され,ぶどうの房状に集積している場合はStaphylococcus属,連鎖する場合や染色性が不均一な場合はStreptococcus属を考慮する。明らかな連鎖がなく,ぶどうの房状でもないグラム陽性球菌は腸球菌を考慮する。
Staphylococcus属を検出した患者が高齢者で,広域スペクトルの抗菌点眼薬を一定期間使用していた場合は,メチシリン耐性菌の可能性を考慮する。グラム陽性桿菌が検出された場合で,広域スペクトルの抗菌点眼薬使用歴がある高齢者の場合は,Corynebacterium属を考慮する。若年CL装用者でグラム陰性桿菌が検出された場合は,Pseudomonas属を考慮する。同様の菌が外傷の既往歴がある高齢者で検出された場合は,Pseudomonas属やその他の環境由来のグラム陰性桿菌を考慮する。眼表面に何らかの易感染性要因を持っている症例で,大きなグラム陰性桿菌かグラム陰性小球菌が検出された場合は,Moraxella属を考慮する。一見,グラム陰性球菌のようにも見える短桿菌が検出された場合は,Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)を考慮する。
小児や乳幼児の場合は,まずはStreptococcus属かインフルエンザ菌を標的とする。成人のCL装用者では,緑膿菌などのグラム陰性桿菌を標的とする。高齢者では,Corynebacterium属やStaphylococcus属を標的とする。
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