直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)の臨床応用が始まってから10年以上が経過した。そこで気になるのが、ワルファリンしか使えなかった時代と比べた転帰の差である。
2017年に報告された伏見AFレジストリデータでは、DOACとワルファリンの間に「脳梗塞・全身性塞栓症」「大出血」いずれのリスクも有意差は認められなかった(3731例解析)。
他方、このたびオランダから報告された観察研究では、DOAC使用率の増加に伴う「脳梗塞」「大出血」発生率の有意減少が認められた。ただし減少幅はいずれも0.5%/年未満である。ライデン大学(オランダ)のQingui Chen氏らによるJAMA Netw Open誌4月25日の掲載論文を紹介したい。
解析対象となったのは、オランダで脳梗塞以外の入院中に心房細動(atrial fibrillation:AF)が検出された30万1301例である。2014年から’18年の間に毎年ほぼ6万例ずつが登録された。
平均年齢は74.2歳、男性が56.3%を占めた。
抗血栓治療の推移を見ると、まず「AF診断から1年以内のOAC開始」率は2014年の67.8%から15年には72.5%に増え、以降17年まで73%弱で推移した。
次にOACに占めるDOACの割合だが、14年の13.5%から29.3%、47.6%、62.4%と毎年増加し2018年には72.0%に達した。
なお抗血小板薬使用率には大きな変化はなく、2015年以降おおむね25%のまま推移した。
そしてこのようなOAC施行率上昇、DOAC服用割合増の結果、脳梗塞、大出血とも発生率は有意に減少した。減少率は脳梗塞が0.24%/年、大出血は0.43%/年である。大出血を「頭蓋内出血」に限ると減少幅は0.20%/年だった。
本研究に申告すべき利益相反はないという。