マイボーム腺は,上下眼瞼に存在する皮脂腺で,瞼板腺とも言われる。マイボーム腺は,眼表面の恒常性を保つ上で重要な役割を果たしており,その異常は,マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction:MGD)と呼ばれる。2010年のMGDワーキンググループによる定義では,「さまざまな原因によってマイボーム腺の機能が瀰漫性に異常をきたした状態であり,慢性の眼不快感を伴う」とされた1)。MGDは,分泌過剰型と分泌減少型にわけられるが,本稿では臨床上重要な後者について述べる。
以下の3つが診断上重要である。
①慢性の眼不快感の存在,②細隙灯顕微鏡によるマイボーム腺開口部の所見,③瞼板圧迫によるマイボーム腺内容物の分泌低下。
基本となるのは,眼瞼の温罨法と瞼縁洗浄である。この両者を併用することで,マイボーム腺の閉塞の解除が促される。専用の機器も開発されているが,日常的なセルフケアを継続して行うことが重要である。
局所的には,MGDによって引き起こされる涙液層の不安定化に対する点眼治療が行われる。特にドライアイを合併している場合には,人工涙液,ヒアルロン酸製剤(角結膜上皮障害を合併している場合),ジクアホソル,レバミピド点眼が有効である。さらに,眼瞼炎を伴っている場合には,アジスロマイシン点眼の使用も考慮される。点眼治療のみでは奏効せず,特に炎症所見が強い場合は,マクロライド系もしくはテトラサイクリン系抗菌薬の内服も行われる(保険適用外)。
近年では,上記の薬物治療以外の局所療法も多数開発されている。わが国では未承認もしくは適応外で多くの場合自費診療となるが,intense pulsed light,thermal pulsation therapy(LipiFlowTM)などは特に海外での有効性が多数報告されている。
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