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【識者の眼】「産婦人科領域における遠隔健康医療相談活用事例⑤─産前産後の切れ目ないサポート」重見大介

No.5172 (2023年06月10日発行) P.64

重見大介 (株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)

登録日: 2023-05-26

最終更新日: 2023-05-26

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筆者が2018年より開始した産婦人科領域における遠隔健康医療相談サービス1)から、活用事例シリーズの第5回目として、今回は「産前産後の切れ目ないサポート」について紹介したいと思います。

日本における母子保健は世界的に見るとかなり充実しています。妊娠中には妊婦健診が14回ほどありますし、産前からサポートが必要な「特定妊婦」(出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦)は早期に同定されます。産後は海外に比べ長めの入院期間が設けられ、産後4週間時点で産褥健診を受けることになります。最近では産後2週間時点での健診が追加となっている自治体も増えています。このような仕組みは「妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援」として、内閣府や厚生労働省が推進しています2)。しかしながら、既存の仕組みではカバーしきれていない点や課題も存在します。たとえば、インターネットやSNSに溢れる大量の情報に振り回されてしまうこと、妊産婦の死亡原因の第1位が自死であること、産後1カ月以降は母親自身の医療機関との接点が希薄になること、などが挙げられます。

こうした母子保健にデジタルの力を活用することで、解決できる課題があると考えています。信頼できる医師や助産師と妊娠期からオンラインでつながることで、里帰り出産でも産後1カ月以降でも、切れ目ないサポートを受けることが可能となります。また、オンライン相談ができる環境は、インターネットやSNSに溢れる情報を深夜に検索し続け疲弊・混乱することなく、信頼できる情報を取得することに有用です。加えて、こうした環境は産後3カ月時点での産後うつ病ハイリスク者を有意に低減させる効果がランダム化比較試験で示されました(現在論文投稿中)3)。日本から新たな「産前産後の切れ目ないサポート」モデルを発信していきたいと思っています。

【文献】

1)株式会社Kids Public:産婦人科オンライン.
https://obstetrics.jp/

2)内閣府:令和3年版 少子化社会対策白書 第2部 少子化対策の具体的状況(第1章 第2節3).
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2021/r03webhonpen/html/b2_s1-2-3.html

3)東京大学大学院医学系研究科:横浜市 令和2・3年度 オンライン健康医療相談モデル事業における妊産婦産後うつ予防効果に関する研究委託 研究結果報告書.
https://www.city.yokohama.lg.jp/business/kyoso/private-fund/social-impact/pfs.files/0004_20220426.pdf

重見大介(株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)[産後うつ病

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