先天色覚異常は遺伝による錐体視物質の異常で,程度によって1色覚,2色覚,異常3色覚,問題となる錐体の種類によって1型色覚(L-錐体の異常),2型色覚(M-錐体の異常),3型色覚(S-錐体の異常)があるが,1色覚や3型色覚は非常に稀で,一般的に色覚異常と言うと,2色覚や異常3色覚,1型色覚や2型色覚を指しており,これらを合わせて先天赤緑色覚異常とも言う。先天赤緑色覚異常はX連鎖性遺伝をし,日本人での頻度は男性の約5%,女性の約0.2%である。
先天赤緑色覚異常は,日常生活では問題ないが,特有の色誤認により学業や職業に支障をきたすことがある。また,本人の自覚が乏しいため,その自覚を促し,回避への対策等についての指導や助言が必要である。
後天色覚異常は,網膜から脳に至る視路の疾患等による色覚の異常である。
仮性同色表(色覚検査表)が基本で,眼科ではパネルD-15で生活への支障の程度を判定する。確定診断にはアノマロスコープを用いる。
先天色覚異常の有無を判定するスクリーニングには,仮性同色表を用いる。石原色覚検査表は長期にわたり世界で最も評価されており,健康診断等には石原色覚検査表Ⅱ コンサイス版14表が,眼科診療には石原色覚検査表Ⅱ 国際版38表が用いられる。
自然光や昼光色蛍光灯のもとで,呈示距離は75cm,1表につき3秒以内に,コンサイス版14表では必ずすべての表を読ませ,誤読2表以上を異常の疑いとする。
数字表のうち検出表の精度は高いが,1型色覚か2型色覚かを分類する表の信頼度はやや低い。環状表は,数字の読めない幼児にも便利で,正読と誤読の両方の切痕(切れ目)が見えてしまうときには,より見やすいほうを選択させる。
正常色覚と先天色覚異常とで読みが異なる表が設けられているが,先天赤緑色覚異常ではデモンストレーション表以外ほとんど読めない場合も多く,ストレスを感じやすい点に注意する。デモンストレーション表も読めない場合には,視力障害や視野障害,その他,先天色覚異常以外の原因を考える。
小児では表の点々をつないで数字と認識することが難しく,うまく答えられないことがある。呈示距離が短いと読みにくいため,規定の距離を保つよう注意する。心因性視覚障害など精神的に不安定な場合にも,検査表を読まないことが多い。したがって,精神面に配慮し,応答が不安定であった場合には,成長や精神面の鎮静を十分に待った上で再検する。また,先天色覚異常の保因者は,正常色覚であっても数表を誤ることがある。
SPP標準色覚検査表 第1部 先天異常用も併用される。
仮性同色表で異常が疑われた場合には,パネルD-15により強度色覚異常(2色覚と異常3色覚の一部)か弱度色覚異常かを判定する。先天色覚異常の確定診断にはアノマロスコープ検査が必要であるが,これは一部の専門施設等でのみ行われている。
後天色覚異常は,SPP標準色覚検査表 第2部 後天異常用とパネルD-15により診断される。
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