尿路感染症(urinary tract infection:UTI)は,腎尿路の細菌またはウイルスによる感染症であり,上部尿路感染症(=腎盂腎炎)と下部尿路感染症(=膀胱炎)にわけられる。前者は発熱を伴い,特に乳児ではそれが唯一の症候であることが多い。後者は幼児期以降が多く,通常発熱はなく,頻尿,排尿時痛,残尿感などの膀胱刺激症状を呈する。
中間尿またはカテーテル尿で膿尿(尿沈渣白血球>5/HPF)および尿培養陽性を証明する1)。ただし,膿尿がなくてもUTIを否定することはできず,臨床経過や尿培養結果を参考にして診断する必要がある。細菌尿の基準は5×104colony-forming unit(CFU)/mL以上である1)が,わが国では103,104,105などのオーダーでのみ結果報告されることが多く,「104CFU/mL」の結果の場合は,臨床的に判断する必要がある。また,これ以下であっても臨床的にUTIを疑うべき場合もある。なお,尿試験紙の白血球エステラーゼは感度は高いが特異度は低い。亜硝酸塩は感度は低いが特異度が高く,UTIの参考所見となる。
有熱性UTIでは腎盂腎炎を念頭に治療を行う。生後2カ月未満または全身状態不良の場合は,経静脈的に抗菌薬を投与する。それ以外の場合は内服の抗菌薬も使用できる。腹部超音波を施行し,水腎症,水尿管症を含め先天性腎尿路異常(CAKUT)の有無を確認する。基礎疾患を有する場合を複雑性UTIと呼び,基礎疾患のない単純性UTIと区別される。単純性UTIの起因菌は圧倒的に大腸菌が多いが,複雑性UTIでは腸球菌,クレブシエラ,緑膿菌などの頻度が高くなる。また近年,単純性UTIを含めてESBL(extended-spectrum beta-lactamases)産生株の増加が指摘されており,注意を要する。いずれの場合も,培養結果と薬剤感受性結果を参考に適宜抗菌薬を変更する。ESBL産生菌は多剤耐性であるが,カルバペネム系抗菌薬に感受性があり,また臨床的にはセファマイシン系(セフメタゾールなど)も有効なことが多い。解熱し,全身状態が改善したら,感受性のある内服の抗菌薬があればそれに変更する。治療期間は静注,内服を合わせて7~14日間である1)。
抗菌薬開始から48~72時間経過しても解熱しない場合,抗菌薬が有効でない可能性を考慮し再評価する必要がある。必要に応じて造影CTを行い,急性巣状細菌性腎炎(AFBN)や腎膿瘍の有無を確認する。AFBNでは3週間の抗菌薬投与が必要である。
尿培養検査に提出した上で,治療を開始する。水分摂取と排尿指導も重要である。抗菌薬の種類による治療反応性の違いは示されていないため,なるべく狭域スペクトラムのものを選択する2)。わが国ではセフェム系抗菌薬を3~5日間経口投与することが多い。
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