細菌性結膜炎には感染病態として,結膜囊内で細菌が過剰に増殖し炎症を起こすものと,結膜に侵入し増殖・炎症を生じる2つの形態があり,多くは前者の形態をとる。
結膜の充血と粘液膿性眼脂を特徴とする。瞼結膜には乳頭や濾胞は認めず,表面が水っぽい感じ(カタル性)となる。しかし炎症が長期化すると,瞼結膜に乳頭増殖が生じる。年齢層により検出される菌に特徴があり,乳幼児ではインフルエンザ菌が,学童期では肺炎球菌が多い。年齢とともに黄色ブドウ球菌が増え,60歳以上になるとコリネバクテリウムが加わり,高齢者ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌などの多剤耐性菌が多い。青壮年では性感染症である淋菌による化膿性結膜炎に注意を要する。これは膿性眼脂(多量のクリーム状)を特徴とし,高度な瞼結膜の充血や腫脹,ビロード状乳頭増殖様の所見を呈することがある。時に角膜合併症がみられ,重症例では角膜穿孔をきたす。なお,新生児では産道感染により生じる。その他,髄膜炎菌,ブドウ球菌(新生児)やモラクセラ菌(小児)では急性化膿性結膜炎として発症することがある。
なお,アレルギー性結膜炎やドライアイあるいはアデノウイルス結膜炎など,他の感染性結膜炎との鑑別が重要である。
日常診療においてフルオロキノロン系点眼薬が汎用されているのが現状である。しかしながら,薬剤の耐性化を防ぎ,かつ適切な治療を行うためには眼脂や結膜囊分泌物の塗抹検鏡,培養検査ならびに薬剤感受性試験が望まれる。治療に際しては,年齢層および眼脂の特徴から原因菌を推定して抗菌点眼薬を処方する。通常,症状は3~4日で改善するが,1週間程度様子をみて改善しなければ,培養検査および薬剤感受性試験の結果から薬剤の変更を行う。また,慢性例では涙道感染症の有無に注意を要する。
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