【質問者】植木智志 新潟大学医歯学総合病院 病院講師
【甲状腺眼症の治療薬として分子標的薬が開発され,治療選択肢が広がる可能性がある】
日本では甲状腺眼症の活動期の治療はステロイドパルス治療が第一選択ですが,近年,甲状腺眼症の免疫学的病態に関する理解が進み,新しい生物学的治療法が注目されています。特にインスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)を標的とするモノクローナル抗体であるteprotumumabは,2020年1月に米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)より初の甲状腺眼症の治療薬として承認されました。
IGF-1Rは甲状腺眼症の眼窩線維芽細胞で異常発現しており,また,TSH受容体とIGF-1Rがクロスリンクして発現していることから,teprotumumabはTSH受容体のシグナルも抑制し,眼窩線維芽細胞の活性化を抑制すると報告されています。そして,サイトカインやヒアルロン酸産生が抑制され,脂肪組織や外眼筋の腫大が改善することで,眼球突出や眼球運動が改善した1)との報告や,活動期の症例だけでなく,数年経過した非活動期の症例でも外眼筋や眼窩脂肪の体積が減少した2)との報告もあり,米国ではteprotumumab投与が施行されるようになり眼窩減圧術の症例が減少しているようです。
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